ケアアセスメント

Q1:「自己鎮静行動、吸綴」

新生児では、自分の顔や身体を触ったり、身体を丸めるなどの自己鎮静行動(自己制御行動)を認め、その行動には吸綴も含まれています。昔から赤ちゃんは、「(生得的に)吸啜欲求がある」、だから、その吸啜欲求が満たされると落ち着く、と教科書などに明記されてきました。吸啜の根源に関することだと思いますが、「何故、吸啜が自己鎮静になるのか?」、考えを教えてもらえますでしょうか?

A1:「触覚、口腔、発達」

触覚は自己鎮静に強い影響を与えます。触覚の中でも圧が高い触覚は一番落ち着きをもたらします(例:抱っこ・抱きしめる)。ヒト(胎児)の触覚で一番最初に発達し始めるのは口腔周囲(口腔内も)、次に手掌になります。つまり、ヒト(胎児)の胎内での手(指)しゃぶりは早期から認め、圧の高い触刺激(触圧覚刺激)として、早期から自己鎮静経験を学習しています。自己抱っこに近い感覚を、口腔内の触圧覚刺激で得ている感覚です。吸啜のリズムは、延髄でのCentral Pattern Generator(CPG)の発生源で生成されていると言われています。このCPGは無意識にパターン化している歩行と同じ原理で、ヒトの動作のリズムを作り出す源です。胎児が母親の心臓の鼓動を胎内で聞くことで落ち着くように、一定のリズムの発生は落ち着きをもらたします。「触圧覚刺激 + 一定リズム=吸啜」は、自己鎮静において強い影響を与えると考えます。

発達ケア

Q1:「長期入院、刺激、かかわり」

入院が長期化した赤ちゃんに対し、少しでも刺激のある時間を提供したく、NICU・GCUで出来るケア(関わりや環境作り、ご家族への対応など)があれば教えてください。

A1:「発達の土台、愛着、個人差」

入院が長期化した赤ちゃんへ刺激を介して、発達や家族とのかかわりを促すことはとても大事です。長期入院する児の疾患や障がいまた月齢によりかかわり方も変わってきますが、発達の土台として伸ばしたい初期の発達は次の通りになります。<運動発達の初期発達>①手・指しゃぶり(おもちゃを持つにつながる)、②体をねじる(寝返りにつながる)、③脚を持ち上げる(手で足を持つにつながる)、④足を交互にキック(這い這いにつながる)。<精神発達の初期発達>①人や物を見る・追う(目と目が合う)、②声や音に興味を持つ(体の動きが止まる)、③声や音を聞き分ける(表情が変わる)。これらの初期発達を伸ばす刺激として、おもちゃを使用して、家族にかかわってもらいます。赤ちゃんの発達する能力を引き出すことで家族の愛着はより深まります。ご家族にはNICU・CCUに入院する児の発達は個人差が大きいことを理解してもらい、あせらずじっくりかかわるように伝えていきます。

ポジショニング・ホールディング・抱っこ

Q1:「退院前、ポジショニング」

退院前の赤ちゃんのポジショニングを必要最低限にするためにバスタオルでの「おくるみ」程度にしたいのですが、体温が上がってしまうためあまり行わないでほしいと思うスタッフもいます。退院前のおくるみのメリットはどういった事が挙げられますか?

A1:「退院後、育児予測」

退院前の場合、おくるみなどのポジショニングが必要とされる場合は、①落ち着きがない、②筋緊張が低い、③反り返りやすいなどがあります。バスタオルであれば、退院前の時期はそれほど体温上昇はみられませんが、ポジショニングは必須で(ポジショニングしないと、退院後はかえって育児に苦労されるだろうと予測される)、体温が上昇する場合はクーリングも併用になると思います。退院前は、基本的に自宅環境に近づけますので、バスタオルを掛けるなどで留まり、特別なポジショニングは必要ないことが多いです。①落ち着きがない場合は、自己鎮静を促すためにおくるみをします。②筋緊張が低い場合は、四肢体幹の屈曲・内転位を強めにした姿勢をとるためにおくるみをします。③反り返りやすい場合は、自己鎮静を促す、反り返り軽減のためのおくるみをします。いずれも似たような姿勢になるかと思いますが、①筋緊張が低い場合は手が口元に近づくような姿勢、②筋緊張が低い場合は四肢の内転位を強調した姿勢、③反り返りやすい場合は頸部または股関節伸展を押さえるような姿勢などが特徴的かと思います。

Q2:「移行期、腹臥位」

急性期が過ぎ移行期での腹臥位のポジショニングに際して、胸クッションの有無、囲い込みの程度、腹臥位の頻度などについて悩む事が多いです。屈曲姿勢を保つことができていれば、児の様子を見て良いとの文献もありますが、少しでも腹臥位の姿勢が崩れる事に対して不安があるスタッフも多く、どうしても腹臥位の頻度が少なくなる事が多いです。腹臥位を多くとった児のほうが四つ這いや立ち上がりが早くなったとの研究もあり、できる限りに腹臥位もとらせてあげたいと思うのですが、どの程度の姿勢の崩れであれば許容して様子を見ていても良いのでしょうか?

A2:「万遍なく体位変換、姿勢・動きの許容範囲」

ポジショニングでは、治療・ケアの妨げにならない範囲で、背臥位・側臥位・腹臥位を万遍なくとっていただくことが良いです。ご質問内にありますように、それぞれの体位で獲得できる発達が違います。腹臥位での姿勢の崩れに対して許容できる範囲は、①姿勢が崩れても再び自ら屈曲位に戻れる、②姿勢が崩れた後、屈曲位に十分戻れなくても、四肢・体幹の捻じれがなく赤ちゃんは安静を保てているになるかと思います。このような児であれば、姿勢固定を優先するより、ある程度動きも許容したほうが、発達的にも良いかと思います。わかりやすいのは腹臥位の姿勢が崩れた後、バイタルが安定しないような場合は、腹臥位姿勢を整え直しますし、その際には胸クッションを入れます。

Q3:「腹臥位、側臥位への移行」

新生児集中治療室(NICU)で全身状態が安定した赤ちゃんに対し、腹臥位から側臥位への移行時期はいつごろが良いでしょうか?現在は体重が1500gを超える、もしくは修正32週以上で側臥位へ以降しています。

A3:「早期でも可、側臥位での発達」

多くの病院では、NICU入院直後は背臥位管理、脳室内出血リスクが低下し皮膚状態が安定してくる3~7日以降は、呼吸状態が有利となる腹臥位管理というパターンをとっていると思います。早ければ、背臥位から腹臥位に体位を変える(または背臥位、腹臥位での体位変換管理)時期に側臥位も導入する病院があります。腹臥位ではポジショニングにより胎児姿勢保持を保持しにくい赤ちゃんもおり、その場合は側臥位のほうが胎児姿勢を保持しやすいこともあります。側臥位は赤ちゃんの対象姿勢を保持しやすいため、背中をしっかりと支持できれば、抱き枕をしたポジショニングで安定した姿勢がとることもできます。各病院で体位変換(各体位の導入時期)に決まりがあり、あまり統一した見解はありませんが、修正32週以降に多い挿管による人工呼吸器離脱後(抜管後もしくは自立呼吸機能向上)の側臥位は発達を促す(正中位発達・手と手を合わせるなど)ためにも重要です。背臥位、腹臥位でのポジショニングに困難を感じる赤ちゃんの場合は、人工呼吸管理時からでも側臥位を導入する選択はあると思います。

Q4:「反り返り、良姿勢保持」

網膜症の新生児で中枢症状(下肢クローヌスの出現など)が生じている赤ちゃんが新生児病棟に入院しています。後弓反張ではないのですが、ストレス時に身体がのけぞり反り返ります。また哺乳時も同様の反り返りが見られ、うまく哺乳が出来ずかなり時間がかかります。バスタオルで屈曲位に包むなど、ポジショニングは実施しているのですが、覚醒状態(state)が上がるにつれ、良姿勢保持に難渋します。一概には言えないと思いますが、何か良い介入方法などがありますのでしょうか?

A4:「抱っこ、ベッドでの再現、反り返り要因」

症候群(先天異常系)であればまだ疾患名がついていないでしょうか。常に全身が緊張し、哺乳時など口腔も含めた全身の過敏性と思われます。一番してあげたい介入は抱っこになります。保育士さんが常勤でいらっしゃる場合は、抱っこを多めにしてあげられるのですが、そうでない場合は理学療法士、看護師などがかかわれる際は、抱っこをしてあげる、それだけでも赤ちゃんが楽になる時間ができると思います。理学療法士はどの抱っこ(屈曲位、縦抱き、横抱きなど)がその児が楽になるかを評価します。下肢クローヌスが目立つような児の場合は、緊張の源になっている下肢で股関節や膝関節を90°以上屈曲位に保てると全身の緊張が落ちることがあります。抱っこ姿勢を10-20分でも続けて、その後ポジショニングをしなくてもベッド上で児がリラックスしていられれば(5分間でも)、その抱っこ姿勢は児にとってとても心地よくベッド上で再現すべきポジショニングということになります。また抱っこでのリラクゼーションが増えるとベッド上でリラックスした時間が自然と増えてくる児もいます。ベッド上で再現すべきポジショニングとして多くの場合、屈曲姿勢がそれにあたると思いますので、体位変換パターンを考慮しながら、パットやバスタオルなどでポジショニング方法を検討します。パットやバスタオルなどではポジショニング姿勢が保持できない場合はクッション椅子を作成します。また腹臥位も重力の手助けで屈曲位を保持し楽になりやすい体位です。この赤ちゃんはおそらくポジショニングだけで24時間365日の筋緊張はコントロールが難しいかもしれません。月日が経ち体が大きくなるにつれて、それはより強調され、コントロールが難しくなってくるかもしれません。ポジショニングは万能ではないと割り切り弛緩薬について医師と相談することも必要になってくるかと思います。下肢クローヌスがありまますので下肢を含めた四肢・体幹の関節可動域練習、過敏性を軽減するための抱っこ中もしくはベッド上でのタッチケア(触覚での快刺激入力)も必須かと思われます。補足になりますが、網膜症で目がどれだけ見えているのか、見えていないのかですが、目が見えない児は精神的なことで緊張しやすくなります。声かけや音楽なども精神的な緊張を落とすきっかけになります。また緊張しやすい要因に呼吸が苦しい、消化が苦しいなどないかも確認してみてください。

Q5:「SATOカーム、ベビーピロー、股関節が広がる」

NICUのポジショニンググッズで日本光電のSATOカームを使用しています。腹臥位での抱き枕(ベビーピロー)は、体重別に使用しています。ベビーピローの基準として1200~1800gなどがありますが、赤ちゃんの体重が1078gの場合、ベビーピローは800~1200gの仕様になります。日齢が経過し、体動が活発になっていくと1200g以下のピローでは、腹臥位で股関節も広がりつぶれやすくなってしまいます。このような状態をどのようにアセスメントし、ベビーピローを変更すれば良いでしょうか?

A5:「股関節が広がる原因、用具基準の考え方」

腹臥位のポジショニングで股関節が広がる(股関節外転位)原因として、①下肢を屈曲し膝が真下に向いた状態(股関節中間位)で体幹(腹部)から保育器マットまでの高さより抱き枕の高さのほうが低い、②膝に体重がかかり過ぎる、③下半身(体幹・下肢)の筋緊張が低いなどがあげれらます。①の場合は、体重別で1つ上基準のベビーピローを使用するか、現ベビーピローにタオルやスポンジで高さを補います。②の場合は、上体拳上位をやや低くする、ベビーピローの頭部側の高さを少し低くするなどで、頭部側に体重を移します。③の場合は、抱き枕で腹部・骨盤上部まで支えます。日々の成長で体動が活発になってくると、体重1000g前後の赤ちゃんはまだ筋緊張が低めであるため、下肢は広がりやすくなります。ベビーカドルで児の体重を(膝でなく)殿部で支える、下肢が外転しくいように児の両側から支えるなどの対応も大切です。児の下半身の体重が一番どこにかかっているか触れながら確認してみてください。下肢が広がりやすい児の多くの場合が膝に体重がかかっています。骨盤が後傾し(背中が丸くなり)、殿部(特に尾骨周辺)で児の体重が支えられていると、体動があっても姿勢が崩れにくくなります。どのポジショニング用具でもいえますが、メーカーが推奨する体重別の用具は1つの用具内でも幅大きいため、用具を使用して児の姿勢保持・自発運動の両立がうまくいかない場合は、原則、児より大きな基準の用具を使用するより、1つ下基準の用具を使用し、タオルやスポンジで高さ・長さ・幅を補うほうが最適な用具の使用になります。

Q6:「体位交換、体位変換」

「体位交換」と「体位変換」はどちらの用語が正しいのでしょうか?

A6:「体位の意味、変換」

「体位交換」と「体位変換」はどちらの用語も正しい用語です。以前は「体位交換」が多く使われていました。姿勢は「体位」と「構え」から成り立っています。「体位」とは「体の向き」の意味です。「構え」とは、「手足体の位置」の意味です。「体位=体の向き」は「交換する」より「変換する」ほうが意味的には通じやすいと考えています。余談ですが、ポジショニングは姿勢管理ですので、体位を考慮することも含まれます。

Q7:「座位保持椅子、作製方法」

新生児病棟での入院が長くなっている赤ちゃんの発達のために座位保持椅子があればと思っており、どのように作製すればよいか悩んでいます。GCUなどで使用できる座位保持椅子(クッションチェア様の椅子)の作製方法があれば教えてください。椅子を作製する際に素材がウレタンだと粉状に風化したりすることもありますでしょうか、またGCUなどに椅子を入れる際に消毒はどうすれば良いでしょうか?

A7:「作製マニュアル、使用方法」

赤ちゃんの座位保持椅子(含む腹臥位保持用具)の作製手順については、「王様の椅子・腹臥位マットの作り方(マニュアル)」がありますので問い合わせくだい。素材は市販されている座布団用スポンジです。数ヵ月経つと黄ばんできますが、粉状に風化することはありません。椅子自体は消毒できませんので、外部から新生児病棟への持ち込みが厳しい場合は、入室時にエタノール拭きします。使用時は椅子にハンドタオルなどを敷き、そこに赤ちゃんに座ってもらいます。ハンドタオルは汚れた場合や1週間程度で変えます。

Q8:「ポジショニングマット、光線療法、買い替え」

NICUでポジショニングマットを使用しています。光線療法を下から当てるとマットが安定しないのですが、光線療法の児には使用しない方がよいのでしょうか?洗濯の影響で1年くらいでマジックテープが粘着しなくなり、周囲をタオルで囲んだり、テープで補強していますが買い換えた方がよいのでしょうか?

A8:「ポジショニングマットの安定化、基準使用期間」

ポジショニングマットは医療用品ではないため、下側からの光線療法の使用テストなどは行っていませんが使用可です。光線療法の土台(マット)の部分が安定感がない場合は、ポジショニングマットも不安定になります。その場合は、ポジショニングマットの周辺を砂のうのようなおもりで押さえることで安定します。ポジショニングマットやマジックテープは、使用頻度、洗濯で使用する洗剤や強度、また殺菌の方法などで劣化の程度は変わってきます。基準使用期間は明確にはしてありませんが、各病院の使用状況を勘案すると、通常の耐久性は1年です。ただ、使用・洗濯程度によっては2-3年使われている病院も多いです。耐久年数に一番影響するのは洗濯方法になります。もし劣化が早いと感じられる場合は、折りたたんで洗濯ネットの使用による洗濯をお奨めしています。

Q9:「人工呼吸器管理、筋緊張亢進、腹臥位」

指定難病疑いの赤ちゃんのリハビリテーション(リハ)に介入しています。易感染性があり呼吸状態が安定しないため、呼吸リハを中心に介入しています。疾患特性として筋緊張が亢進しやすく、特に腹部の緊張亢進による呼吸抑制が容易に生じます。そのため、人工呼吸器の吸気圧もかなり高く設定せざる負えない状況です。児の呼吸を少しでも安楽にするために腹臥位の導入を検討しています。人工呼吸器管理で筋緊張の高い児の腹臥位でのポジショニングのポイント、看護師が介入・実施するためのポイントなど教えてください。

A9:「鎮静、専用用具、姿勢評価」

腹部も含めた筋緊張亢進が生じ、それにより呼吸状況が芳しくない場合、安楽な呼吸へ導くために腹臥位の導入試行は有効です。人工呼吸器管理を行っている場合、新しい体位により当初は児が落ち着かず、抜管リスクが高くなる可能性があります。そのため、児の更なる鎮静が必要となる場合があります。医師との話し合いで更なる鎮静が可能か方針を決定するとともに、看護師が腹臥位のポジショニングを実施できるためのマニュアル作成やいつも同じような腹臥位が実施できるための専用の用具が必要です。また看護師が慣れるまで、その都度理学療法士などの付き添い・介入があると良いです。腹臥位を導入する前に、他の体位でリラックスできる姿勢を評価し、その姿勢で腹臥位保持できると、児の腹臥位の受け入れが良くなります。

Q10:「赤ちゃん、かんしゃく、落ち着かせる」

新生児看護を担当しています。赤ちゃんがかんしゃくを起こしたとき、児を早く鎮静できるような、落ち着けられるような手技を教えて欲しいです。

A10:「抱っこ、ホールディング、圧迫」

赤ちゃんが落ち着かず、バイタルや呼吸などに影響を認める場合、抱っこが一番有用ですが、抱っこが困難な場合は両手で児を包み込むホールディングやおしゃぶりが有用です。ホールディングは児をおさえる箇所や手の圧迫の圧力にコツがあります。自分の頬に両手を当て、気持ち良いと感じるわりと強めに圧迫をした方が児が心地よく感じ、落ち着きやすくなります。抱っこの場合も児をバスタオルでやや圧迫感がある包み込みを行うと児は落ち着きやすくなります。

Q11:「ポジショニング工夫点、移行期・安定期、一時的安静保持」

①修正35週以降の児や正期産の児の安静保持を苦手とするスタッフが多いです。
ポジショニングなどで工夫する点があれば知りたいです。

②病棟では呼吸管理を第一優先に考えており、コットに移床するまで腹臥位を取っていることが多いです。一律のポジショニングではなく、移行期や安定期のポジショニングの導入が必要と考えていますが浸透しません。導入のための工夫する点がありますでしょうか?

③コットで一時的に安静が取れないような場面でさらに抱っこが困難なときに腹臥位を選択することがあるのですが、その選択は児にとっては良いことなのでしょうか?呼吸が不安定な児に対して、コット移床後もポジショニング導入の必要性は病棟で周知することは出来たのですが、一時的な安静目的での体位調整など工夫があれば教えて頂きたいです。

A11:「抱っこ姿勢、感覚運動経験、体重支持」

①修正 35週以降や正期産児の場合、いわゆる早産児より体が大きいため、両手で児を覆うようなホールディングでの安静保持は困難な場合は多いです。この時期の児は「抱っこで落ち着かせてから、コットに戻す」という流れで安静保持を促します。抱っこでは、頸部・背中・臀部をしっかりと保持すること、落ち着きのない児はやや強めに圧迫をすることがコツになります。抱っこは揺らすことで児を落ち着かせると、揺れが止まる時点で児は落ち着かなくなります。抱っこは揺れで児を落ち着かせるのではなく、姿勢で落ち着かせるように抱っこの仕方を習得します。また落ち着いた抱っこの姿勢のままコットに寝かせるポジショニングのつながりも安静保持のコツになります。

②児にとって呼吸が楽であれば、腹臥位保持は有用です。ただし、腹臥位が苦手で呼吸苦を示す児も少なからずいます。腹臥位での呼吸苦や落ち着かない状況を認める児は側臥位や背臥位に体位を変換することは、児の安静保持のために必要な考え方です。またこの時期は将来の発達の方向性を決める大事な時期であり、発達の成熟を抑制するような一辺倒の体位保持はリスクがあります。どの体位をとっても呼吸に変化を認めないような児は、多様な体位をとることで、多様な発達(感覚運動経験)を積むことができます。背臥位は上下肢の拳上や視聴覚の発達、側臥位は体幹の安定性や対称的な発達、腹臥位は頭部回旋や拳上また下肢のキッキングなどを促します。体位別に優位に成熟する発達があることを理解してもらう必要があります。

③抱っこが困難で一時的に安静保持が必要な児が腹臥位保持を行い落ち着く場合は、腹臥位は有用です。落ち着きがなく一時的な安静保持を必要とする場合、児をより屈曲位(胎児姿勢)に近づける、児を包むバスタオルなどをよりきつめにする、ポジショニングで児の体重が一番かかる箇所をポジショニング用具でしっかり支えるなどの工夫がポイントになります。

Q12:「保育器内、ポジショニング、囲い込み」

新生児看護初心者で、日々悩むことが多いです。保育器内で囲みを作って赤ちゃんがポジショニングをされているのをみますが、どの様に作られているのでしょうか?適応や利点なども教えて下さい。

A12:「ロールタオル、U字型、並べる」

保育器内の囲い込みのポジショニングの方法は様々です。基本的にバスタオルまたはハーフタオルをロール状に巻き、U字型に曲げて、赤ちゃんを囲むパターンが多いです。ただ1本のロールタオルをU字型にして用いると、児に対して、囲みの高さが低くなりやすいため、児の姿勢が保持できず姿勢が崩れることが多いです。そのため、ハーフタオルをロール状にしたものを3本または4本用意し、そのロールタオルをU字型またはロの字型に並べ囲む方法が有用です。挿管や安静が必要な児はしっかりと包み込み、児の動きを許す移行期の時期は、緩やかな包み込みや囲い込みを導入します。囲い込みは児の観察が行いやすい利点はありますが、落ち着きのない児や安静が必要な児の場合は包み込みのほうが有用です。

Q13:「人工呼吸器管理、未頸定、上体挙上位」

人工呼吸器管理の未頸定の1歳児で身長は大きく80cmほどあります。ベッド上で児の負担感が少ない上体挙上位の姿勢を保持するために、使いやすい椅子やポジショニング方法などアドバイスをお願いします。

A13:「三角マット、クッションチェア、ベビーカー」

①簡易的な上体挙上位としてベッドをギャッジアップし体幹を保持しますが、ギャッジアップできない場合は、クッションチェアの下に置く三角マットのような形状マットを児の下に置き体を起こします。②安定感ある椅子はクッションチェア(三角マットで起こす角度を低く調整)で、首の周りを芯の入ったロールクッション(または旅行用の首を支えるエアクッション)で覆い頭を安定させます。体幹が側方に崩れないように脇をクッションやタオルなどで支えます。クッションチェアの購入は、身体障がい者手帳を取得していない場合は、日常生活用具給付事業(介護・訓練支援用具)を利用します。③ベッドから離れることができる場合は、ベビーカーB型(大きめの児用)をベッドサイドに持ち込み座らせることもよく行う方法です。どの方法も人工呼吸器が児より高い位置にならないように注意します(呼吸器の回路に溜まる水が児に流れこまないように)。

Q14:「上体挙上位、長時間保持、リスク」

新生児のポジショニングを導入する際に上体挙上位(角度30から45度)の保持が増えています。落ち着かない、反り返りやすい、胃食道逆流症など要因は様々です。上体挙上位を行う際、四肢体幹を屈曲位に保持し抱っこに近い姿勢をとっています。長時間の上体挙上位保持は児にとってリスクはありますでしょうか?

A14:「支持点・支持面、反り返り軽減、同一体位制限」

反り返りやすい児の場合、背臥位では全身が支持面となるため、重力に曝され引っ張られるようにより反り返りやすくなります。上体挙上位で四肢体幹の屈曲位を保持すると、骨盤に支持点ができ、児の体幹を屈曲方向に持っていきやすくなるため、反り返りが軽減できます。また上体が起きている分、重力方向に引かれる児の支持面の面積が少なくなり、反り返り助長も軽減されます。上体挙上位を長く保持すると、頸部や体幹筋力が充分でない児の疲労が増すことや、他の体位と同様に皮膚損傷(褥瘡)リスクが高まります。一般的に同一体位を2-3時間以上は保持しないという考え方で良く、児がリラックスする(力を抜く)経験、自分で自己鎮静する経験(手を口へ持っていく、自分で頸部や体幹を屈曲方向へ持っていくなど)を積んでいくことで、徐々に反り返りが減少していきます。

Q15:「超早産児、腹臥位、足部外反位」

修正22〜24週の挿管中の児を腹臥位で管理していると、股関節は開排位・足部は外反位となり良肢位姿勢が取れません。抱き枕を使うと児の姿勢が不安定になり計画外抜管リスクが高くなることが懸念され、また皮膚も脆弱なため、最小限のポジショニングを行いたいです。

A15:「治療・ケア優先、下肢伸展傾向、足首ロール」

修正22-24週の出生直後の超早産児は皮膚が脆弱であり、慎重な観察も必要なため、ポジショニング導入も治療やケアを優先することになります。したがって児は胎児姿勢のような屈曲位はとらず、しっかりと包み込むことは行わず、できる範囲の高さの抱き枕を置き、四肢を屈曲・内転位にし、全身を緩やかに包み込みます。その際、下肢を屈曲すればするほど股関節の開排位(外転角度)は大きくなり、足部は外反しますので、下肢は伸展傾向とし、ロール状コットンを足背側足関節に置き、足部の中間位を保持します。皮膚を含めた児の状態が安定してきたら、胎児姿勢に近いしっかりと包み込んだ、児の筋緊張を高める良肢位姿勢を保持します。足部の外反位での拘縮が残った場合は、定期的に関節可動域練習を開始します。

Q16:「側臥位、背臥位、体位変わる」

側臥位を保持しているとじきに背臥位になってしまう赤ちゃんがいます。原因はなんでしょうか?

A16:「ロールタオル、ずれる、肩甲帯後退」

側臥位は身体を支える支持面が狭いため、赤ちゃんにとって不安定な体位であり、自然に背臥位になりやすい児は多いです。原因の多くは、側臥位保持のために背中に置くロールタオルやクッションなどが、児の動きで徐々に後方へずれて、それとともに背臥位になってしまう場合です。背中に置くロールタオルやクッションそのものが動かないように固定することが必要です。また、側臥位での上側の肩甲帯が後退しやすい(上肢が外転しやすい)、頸部が伸展(上側方向に)回旋しやすい児も背臥位になりやすいです。頸部を軽度屈曲させ、上側の肩甲帯が後退しないよう、上肢を体幹の前に出します。

Q17:「安全帯、注意点、ポジショニング」

NICU入院中の児に対する安全帯使用時の注意点やポジショニングについて教えてください。

A17:「上肢伸展位、骨折、胎児姿勢保持」

人工呼吸器や経管栄養などチューブの抜管予防のためにミトンなどの安全帯を使用される場合があります。可能であればポジショニングで安静を保ち、安全帯の使用は控えます。安全帯の導入が必要な場合、通常は口元にあるチューブに手が届かないように、上肢伸展位でチューブから一番遠い位置に手を固定することが多いです。そうすると、ある程度激しく動こうとしたときに、易骨折性のある児は安全帯のテンションにひかれ骨折する可能性があります。安全帯を導入する場合は、上肢は屈曲位で顔近くに置き、胎児姿勢保持のポジショニングを行うと、より落ち着きやすくなります。

Q18:「易骨折性、体位変換、注意点」

易骨折性のある早産児の体位変換時の注意点について教えてください。

A18:「マットレス、傾斜、ホールディング」

易骨折性の高い児の急性期管理では、児自身は動かさず、児の下に敷いてあるマットレスやポジショニング用具そのものを傾けて軽度の体位変換を行います。児自身を動かせる状態になった場合は、胎児姿勢で児を両手で包み込むホールディングを行い、ホールディングをしたまま四肢は屈曲内転位、体幹を捩じらず、ゆっくり転がすように体位変換を行います。

Q19:「反り返り、抱っこ、指導方法」

反り返りが強い赤ちゃんの抱き方や両親への指導方法を教えてください。

A19:「突っ張り始め、押さえこみ、お座り姿勢」

反り返りが強い赤ちゃんには、反り返りが始まる身体の部位があります。通常は頸部や腰から突っ張り始め、全身が反り返ります。抱っこの際は、頸部や腰が突っ張らないように、抱っこする腕でしっかり押さえこみます。頸部はやや屈曲位、腰は股関節を90度以上屈曲することで押さえこみができます。最初、児は反り返ろうとかなりの力で突っ張ってきますが、反り返りができないとわかると、全身の力がスッと抜けてきます。それまで押さえこみが必要です。抱っこは全身が丸くなる姿勢となりますが、前抱きは児を丸い姿勢で抱きにくく、背臥位に近い横抱きは、重力の影響でより反り返りやすくなります。両親には座っていただき、児がお座りするような姿勢で横抱きを行うと、重力の影響も受けにくく、丸くなる姿勢で抱きやすくなります。児の頸部や腰の押さえこみが怖い、赤ちゃんがかわいそうと、両親は最初不安を抱きますが、そこはグッと心を鬼にして、押さえこむよう指導します。より児を落ち着かせる場合は、児の全身をバスタオルで包み込みます。

Q20:「おひなまき、股関節脱臼、鎮静促進」

GCU入院中や退院後の赤ちゃんの“おひなまき”は、股関節脱臼のリスクを高めると聞きます。落ち着きのない児に鎮静化を促す目的で“おひなまき”を行うことは良いことではないかと思いますが、どのように支援すれば良いでしょうか?

A20:「おくるみ、股関節形成不全、股関節屈曲外転外旋位」

“おひなまき”つまり“おくるみ(スワドル・包み込み)”は、赤ちゃんを落ち着かせたいときに行います。生後3ヶ月頃までは、股関節を内転位で屈曲保持することでs、股関節の脱臼(発育性股関節形成不全;元 先天性股関節脱臼)リスクが高まります。そのため股関節の屈曲・外転・外旋位を保持することで、大腿骨頭が臼蓋に収まりやすくなり、“おくるみ”も安全に行えます。胎児が母体の子宮内で育つ妊娠後期では、児の体が大きくなるにつれ、足部は体幹や頭に近づくほど、股関節は屈曲・外転・外旋位を保持しています。ある地域で古くからの慣習として、出生後から1歳頃まで日常で“おくるみ”を行っていた際は、股関節は屈曲・内転位で保持され、その地域の赤ちゃん達の股関節脱臼率が非常に高かったという報告があります。股関節の肢位に気をつければ、落ち着きのない児は鎮静化を促す目的で、ややきつめの“おくるみ”でも、安全に赤ちゃんに安心をもたらしますことができます。