ケアアセスメント

Q1:「自己鎮静行動、吸綴」</p> <p>新生児では、自分の顔や身体を触ったり、身体を丸めるなどの自己鎮静行動(自己制御行動)を認め、その行動には吸綴も含まれています。昔から赤ちゃんは、「(生得的に)吸啜欲求がある」、だから、その吸啜欲求が満たされると落ち着く、と教科書などに明記されてきました。吸啜の根源に関することだと思いますが、「何故、吸啜が自己鎮静になるのか?」、考えを教えてもらえますでしょうか?
A1:「触覚、口腔、発達」

触覚は自己鎮静に強い影響を与えます。触覚の中でも圧が高い触覚は一番落ち着きをもたらします(例:抱っこ・抱きしめる)。ヒト(胎児)の触覚で一番最初に発達し始めるのは口腔周囲(口腔内も)、次に手掌になります。つまり、ヒト(胎児)の胎内での手(指)しゃぶりは早期から認め、圧の高い触刺激(触圧覚刺激)として、早期から自己鎮静経験を学習しています。自己抱っこに近い感覚を、口腔内の触圧覚刺激で得ている感覚です。吸啜のリズムは、延髄でのCentral Pattern Generator(CPG)の発生源で生成されていると言われています。このCPGは無意識にパターン化している歩行と同じ原理で、ヒトの動作のリズムを作り出す源です。胎児が母親の心臓の鼓動を胎内で聞くことで落ち着くように、一定のリズムの発生は落ち着きをもらたします。「触圧覚刺激 + 一定リズム=吸啜」は、自己鎮静において強い影響を与えると考えます。[理学療法士 木原秀樹]

発達ケア

Q1:「長期入院、刺激、かかわり」</p> <p>入院が長期化した赤ちゃんに対し、少しでも刺激のある時間を提供したく、NICU・GCUで出来るケア(関わりや環境作り、ご家族への対応など)があれば教えてください。
A1:「発達の土台、愛着、個人差」

入院が長期化した赤ちゃんへ刺激を介して、発達や家族とのかかわりを促すことはとても大事です。長期入院する児の疾患や障がいまた月齢によりかかわり方も変わってきますが、発達の土台として伸ばしたい初期の発達は次の通りになります。<運動発達の初期発達>①手・指しゃぶり(おもちゃを持つにつながる)、②体をねじる(寝返りにつながる)、③脚を持ち上げる(手で足を持つにつながる)、④足を交互にキック(這い這いにつながる)。<精神発達の初期発達>①人や物を見る・追う(目と目が合う)、②声や音に興味を持つ(体の動きが止まる)、③声や音を聞き分ける(表情が変わる)。これらの初期発達を伸ばす刺激として、おもちゃを使用して、家族にかかわってもらいます。赤ちゃんの発達する能力を引き出すことで家族の愛着はより深まります。ご家族にはNICU・CCUに入院する児の発達は個人差が大きいことを理解してもらい、あせらずじっくりかかわるように伝えていきます。[理学療法士 木原秀樹]

ポジショニング・ホールディング・抱っこ

Q1:「退院前、ポジショニング」</p> <p>退院前の赤ちゃんのポジショニングを必要最低限にするためにバスタオルでの「おくるみ」程度にしたいのですが、体温が上がってしまうためあまり行わないでほしいと思うスタッフもいます。退院前のおくるみのメリットはどういった事が挙げられますか?
A1:「退院後、育児予測」

退院前の場合、おくるみなどのポジショニングが必要とされる場合は、①落ち着きがない、②筋緊張が低い、③反り返りやすいなどがあります。バスタオルであれば、退院前の時期はそれほど体温上昇はみられませんが、ポジショニングは必須で(ポジショニングしないと、退院後はかえって育児に苦労されるだろうと予測される)、体温が上昇する場合はクーリングも併用になると思います。退院前は、基本的に自宅環境に近づけますので、バスタオルを掛けるなどで留まり、特別なポジショニングは必要ないことが多いです。①落ち着きがない場合は、自己鎮静を促すためにおくるみをします。②筋緊張が低い場合は、四肢体幹の屈曲・内転位を強めにした姿勢をとるためにおくるみをします。③反り返りやすい場合は、自己鎮静を促す、反り返り軽減のためのおくるみをします。いずれも似たような姿勢になるかと思いますが、①筋緊張が低い場合は手が口元に近づくような姿勢、②筋緊張が低い場合は四肢の内転位を強調した姿勢、③反り返りやすい場合は頸部または股関節伸展を押さえるような姿勢などが特徴的かと思います。[理学療法士 木原秀樹]

Q2:「移行期、腹臥位」</p> <p>急性期が過ぎ移行期での腹臥位のポジショニングに際して、胸クッションの有無、囲い込みの程度、腹臥位の頻度などについて悩む事が多いです。屈曲姿勢を保つことができていれば、児の様子を見て良いとの文献もありますが、少しでも腹臥位の姿勢が崩れる事に対して不安があるスタッフも多く、どうしても腹臥位の頻度が少なくなる事が多いです。腹臥位を多くとった児のほうが四つ這いや立ち上がりが早くなったとの研究もあり、できる限りに腹臥位もとらせてあげたいと思うのですが、どの程度の姿勢の崩れであれば許容して様子を見ていても良いのでしょうか?
A2:「万遍なく体位変換、姿勢・動きの許容範囲」

ポジショニングでは、治療・ケアの妨げにならない範囲で、背臥位・側臥位・腹臥位を万遍なくとっていただくことが良いです。ご質問内にありますように、それぞれの体位で獲得できる発達が違います。腹臥位での姿勢の崩れに対して許容できる範囲は、①姿勢が崩れても再び自ら屈曲位に戻れる、②姿勢が崩れた後、屈曲位に十分戻れなくても、四肢・体幹の捻じれがなく赤ちゃんは安静を保てているになるかと思います。このような児であれば、姿勢固定を優先するより、ある程度動きも許容したほうが、発達的にも良いかと思います。わかりやすいのは腹臥位の姿勢が崩れた後、バイタルが安定しないような場合は、腹臥位姿勢を整え直しますし、その際には胸クッションを入れます。[理学療法士 木原秀樹]

Q3:「腹臥位、側臥位への移行」</p> <p>新生児集中治療室(NICU)で全身状態が安定した赤ちゃんに対し、腹臥位から側臥位への移行時期はいつごろが良いでしょうか?現在は体重が1500gを超える、もしくは修正32週以上で側臥位へ以降しています。
A3:「早期でも可、側臥位での発達」

多くの病院では、NICU入院直後は背臥位管理、脳室内出血リスクが低下し皮膚状態が安定してくる3~7日以降は、呼吸状態が有利となる腹臥位管理というパターンをとっていると思います。早ければ、背臥位から腹臥位に体位を変える(または背臥位、腹臥位での体位変換管理)時期に側臥位も導入する病院があります。腹臥位ではポジショニングにより胎児姿勢保持を保持しにくい赤ちゃんもおり、その場合は側臥位のほうが胎児姿勢を保持しやすいこともあります。側臥位は赤ちゃんの対象姿勢を保持しやすいため、背中をしっかりと支持できれば、抱き枕をしたポジショニングで安定した姿勢がとることもできます。各病院で体位変換(各体位の導入時期)に決まりがあり、あまり統一した見解はありませんが、修正32週以降に多い挿管による人工呼吸器離脱後(抜管後もしくは自立呼吸機能向上)の側臥位は発達を促す(正中位発達・手と手を合わせるなど)ためにも重要です。背臥位、腹臥位でのポジショニングに困難を感じる赤ちゃんの場合は、人工呼吸管理時からでも側臥位を導入する選択はあると思います。[理学療法士 木原秀樹]

Q4:「反り返り、良姿勢保持」</p> <p>網膜症の新生児で中枢症状(下肢クローヌスの出現など)が生じている赤ちゃんが新生児病棟に入院しています。後弓反張ではないのですが、ストレス時に身体がのけぞり反り返ります。また哺乳時も同様の反り返りが見られ、うまく哺乳が出来ずかなり時間がかかります。バスタオルで屈曲位に包むなど、ポジショニングは実施しているのですが、覚醒状態(state)が上がるにつれ、良姿勢保持に難渋します。一概には言えないと思いますが、何か良い介入方法などがありますのでしょうか?
A4:「抱っこ、ベッドでの再現、反り返り要因」

症候群(先天異常系)であればまだ疾患名がついていないでしょうか。常に全身が緊張し、哺乳時など口腔も含めた全身の過敏性と思われます。一番してあげたい介入は抱っこになります。保育士さんが常勤でいらっしゃる場合は、抱っこを多めにしてあげられるのですが、そうでない場合は理学療法士、看護師などがかかわれる際は、抱っこをしてあげる、それだけでも赤ちゃんが楽になる時間ができると思います。理学療法士はどの抱っこ(屈曲位、縦抱き、横抱きなど)がその児が楽になるかを評価します。下肢クローヌスが目立つような児の場合は、緊張の源になっている下肢で股関節や膝関節を90°以上屈曲位に保てると全身の緊張が落ちることがあります。抱っこ姿勢を10-20分でも続けて、その後ポジショニングをしなくてもベッド上で児がリラックスしていられれば(5分間でも)、その抱っこ姿勢は児にとってとても心地よくベッド上で再現すべきポジショニングということになります。また抱っこでのリラクゼーションが増えるとベッド上でリラックスした時間が自然と増えてくる児もいます。ベッド上で再現すべきポジショニングとして多くの場合、屈曲姿勢がそれにあたると思いますので、体位変換パターンを考慮しながら、パットやバスタオルなどでポジショニング方法を検討します。パットやバスタオルなどではポジショニング姿勢が保持できない場合はクッション椅子を作成します。また腹臥位も重力の手助けで屈曲位を保持し楽になりやすい体位です。この赤ちゃんはおそらくポジショニングだけで24時間365日の筋緊張はコントロールが難しいかもしれません。月日が経ち体が大きくなるにつれて、それはより強調され、コントロールが難しくなってくるかもしれません。ポジショニングは万能ではないと割り切り弛緩薬について医師と相談することも必要になってくるかと思います。下肢クローヌスがありまますので下肢を含めた四肢・体幹の関節可動域練習、過敏性を軽減するための抱っこ中もしくはベッド上でのタッチケア(触覚での快刺激入力)も必須かと思われます。補足になりますが、網膜症で目がどれだけ見えているのか、見えていないのかですが、目が見えない児は精神的なことで緊張しやすくなります。声かけや音楽なども精神的な緊張を落とすきっかけになります。また緊張しやすい要因に呼吸が苦しい、消化が苦しいなどないかも確認してみてください。[理学療法士 木原秀樹]

Q5:「SATOカーム、ベビーピロー、股関節が広がる」</p> <p>NICUのポジショニンググッズで日本光電のSATOカームを使用しています。腹臥位での抱き枕(ベビーピロー)は、体重別に使用しています。ベビーピローの基準として1200~1800gなどがありますが、赤ちゃんの体重が1078gの場合、ベビーピローは800~1200gの仕様になります。日齢が経過し、体動が活発になっていくと1200g以下のピローでは、腹臥位で股関節も広がりつぶれやすくなってしまいます。このような状態をどのようにアセスメントし、ベビーピローを変更すれば良いでしょうか?<br />
A5:「股関節が広がる原因、用具基準の考え方」

腹臥位のポジショニングで股関節が広がる(股関節外転位)原因として、①下肢を屈曲し膝が真下に向いた状態(股関節中間位)で体幹(腹部)から保育器マットまでの高さより抱き枕の高さのほうが低い、②膝に体重がかかり過ぎる、③下半身(体幹・下肢)の筋緊張が低いなどがあげれらます。①の場合は、体重別で1つ上基準のベビーピローを使用するか、現ベビーピローにタオルやスポンジで高さを補います。②の場合は、上体拳上位をやや低くする、ベビーピローの頭部側の高さを少し低くするなどで、頭部側に体重を移します。③の場合は、抱き枕で腹部・骨盤上部まで支えます。日々の成長で体動が活発になってくると、体重1000g前後の赤ちゃんはまだ筋緊張が低めであるため、下肢は広がりやすくなります。ベビーカドルで児の体重を(膝でなく)殿部で支える、下肢が外転しくいように児の両側から支えるなどの対応も大切です。児の下半身の体重が一番どこにかかっているか触れながら確認してみてください。下肢が広がりやすい児の多くの場合が膝に体重がかかっています。骨盤が後傾し(背中が丸くなり)、殿部(特に尾骨周辺)で児の体重が支えられていると、体動があっても姿勢が崩れにくくなります。どのポジショニング用具でもいえますが、メーカーが推奨する体重別の用具は1つの用具内でも幅大きいため、用具を使用して児の姿勢保持・自発運動の両立がうまくいかない場合は、原則、児より大きな基準の用具を使用するより、1つ下基準の用具を使用し、タオルやスポンジで高さ・長さ・幅を補うほうが最適な用具の使用になります。[理学療法士 木原秀樹]

Q6:「体位交換、体位変換」</p> <p>「体位交換」と「体位変換」はどちらの用語が正しいのでしょうか?<br />
A6:「体位の意味、変換」

「体位交換」と「体位変換」はどちらの用語も正しい用語です。以前は「体位交換」が多く使われていました。姿勢は「体位」と「構え」から成り立っています。「体位」とは「体の向き」の意味です。「構え」とは、「手足体の位置」の意味です。「体位=体の向き」は「交換する」より「変換する」ほうが意味的には通じやすいと考えています。余談ですが、ポジショニングは姿勢管理ですので、体位を考慮することも含まれます。[理学療法士 木原秀樹]

Q7:「座位保持椅子、作製方法」</p> <p>新生児病棟での入院が長くなっている赤ちゃんの発達のために座位保持椅子があればと思っており、どのように作製すればよいか悩んでいます。GCUなどで使用できる座位保持椅子(クッションチェア様の椅子)の作製方法があれば教えてください。椅子を作製する際に素材がウレタンだと粉状に風化したりすることもありますでしょうか、またGCUなどに椅子を入れる際に消毒はどうすれば良いでしょうか?<br />
A7:「作製マニュアル、使用方法」

赤ちゃんの座位保持椅子(含む腹臥位保持用具)の作製手順については、「王様の椅子・腹臥位マットの作り方(マニュアル)」がありますので問い合わせくだい。素材は市販されている座布団用スポンジです。数ヵ月経つと黄ばんできますが、粉状に風化することはありません。椅子自体は消毒できませんので、外部から新生児病棟への持ち込みが厳しい場合は、入室時にエタノール拭きします。使用時は椅子にハンドタオルなどを敷き、そこに赤ちゃんに座ってもらいます。ハンドタオルは汚れた場合や1週間程度で変えます。[理学療法士 木原秀樹]

Q8:「ポジショニングマット、光線療法、買い替え」</p> <p>NICUでポジショニングマットを使用しています。光線療法を下から当てるとマットが安定しないのですが、光線療法の児には使用しない方がよいのでしょうか?洗濯の影響で1年くらいでマジックテープが粘着しなくなり、周囲をタオルで囲んだり、テープで補強していますが買い換えた方がよいのでしょうか?<br />
A8:「ポジショニングマットの安定化、基準使用期間」

ポジショニングマットは医療用品ではないため、下側からの光線療法の使用テストなどは行っていませんが使用可です。光線療法の土台(マット)の部分が安定感がない場合は、ポジショニングマットも不安定になります。その場合は、ポジショニングマットの周辺を砂のうのようなおもりで押さえることで安定します。ポジショニングマットやマジックテープは、使用頻度、洗濯で使用する洗剤や強度、また殺菌の方法などで劣化の程度は変わってきます。基準使用期間は明確にはしてありませんが、各病院の使用状況を勘案すると、通常の耐久性は1年です。ただ、使用・洗濯程度によっては2-3年使われている病院も多いです。耐久年数に一番影響するのは洗濯方法になります。もし劣化が早いと感じられる場合は、折りたたんで洗濯ネットの使用による洗濯をお奨めしています。[理学療法士 木原秀樹]

Q9:「人工呼吸器管理、筋緊張亢進、腹臥位」</p> <p>指定難病疑いの赤ちゃんのリハビリテーション(リハ)に介入しています。易感染性があり呼吸状態が安定しないため、呼吸リハを中心に介入しています。疾患特性として筋緊張が亢進しやすく、特に腹部の緊張亢進による呼吸抑制が容易に生じます。そのため、人工呼吸器の吸気圧もかなり高く設定せざる負えない状況です。児の呼吸を少しでも安楽にするために腹臥位の導入を検討しています。人工呼吸器管理で筋緊張の高い児の腹臥位でのポジショニングのポイント、看護師が介入・実施するためのポイントなど教えてください。
A9:「鎮静、専用用具、姿勢評価」

腹部も含めた筋緊張亢進が生じ、それにより呼吸状況が芳しくない場合、安楽な呼吸へ導くために腹臥位の導入試行は有効です。人工呼吸器管理を行っている場合、新しい体位により当初は児が落ち着かず、抜管リスクが高くなる可能性があります。そのため、児の更なる鎮静が必要となる場合があります。医師との話し合いで更なる鎮静が可能か方針を決定するとともに、看護師が腹臥位のポジショニングを実施できるためのマニュアル作成やいつも同じような腹臥位が実施できるための専用の用具が必要です。また看護師が慣れるまで、その都度理学療法士などの付き添い・介入があると良いです。腹臥位を導入する前に、他の体位でリラックスできる姿勢を評価し、その姿勢で腹臥位保持できると、児の腹臥位の受け入れが良くなります。[理学療法士 木原秀樹]

Q10:「赤ちゃん、かんしゃく、落ち着かせる」</p> <p>新生児看護を担当しています。赤ちゃんがかんしゃくを起こしたとき、児を早く鎮静できるような、落ち着けられるような手技を教えて欲しいです。
A10:「抱っこ、ホールディング、圧迫」

赤ちゃんが落ち着かず、バイタルや呼吸などに影響を認める場合、抱っこが一番有用ですが、抱っこが困難な場合は両手で児を包み込むホールディングやおしゃぶりが有用です。ホールディングは児をおさえる箇所や手の圧迫の圧力にコツがあります。自分の頬に両手を当て、気持ち良いと感じるわりと強めに圧迫をした方が児が心地よく感じ、落ち着きやすくなります。抱っこの場合も児をバスタオルでやや圧迫感がある包み込みを行うと児は落ち着きやすくなります。[理学療法士 木原秀樹]

Q11:「ポジショニング工夫点、移行期・安定期、一時的安静保持」</p> <p>①修正35週以降の児や正期産の児の安静保持を苦手とするスタッフが多いです。<br /> ポジショニングなどで工夫する点があれば知りたいです。</p> <p>②病棟では呼吸管理を第一優先に考えており、コットに移床するまで腹臥位を取っていることが多いです。一律のポジショニングではなく、移行期や安定期のポジショニングの導入が必要と考えていますが浸透しません。導入のための工夫する点がありますでしょうか?</p> <p>③コットで一時的に安静が取れないような場面でさらに抱っこが困難なときに腹臥位を選択することがあるのですが、その選択は児にとっては良いことなのでしょうか?呼吸が不安定な児に対して、コット移床後もポジショニング導入の必要性は病棟で周知することは出来たのですが、一時的な安静目的での体位調整など工夫があれば教えて頂きたいです。
A11:「抱っこ姿勢、感覚運動経験、体重支持」

①修正 35週以降や正期産児の場合、いわゆる早産児より体が大きいため、両手で児を覆うようなホールディングでの安静保持は困難な場合は多いです。この時期の児は「抱っこで落ち着かせてから、コットに戻す」という流れで安静保持を促します。抱っこでは、頸部・背中・臀部をしっかりと保持すること、落ち着きのない児はやや強めに圧迫をすることがコツになります。抱っこは揺らすことで児を落ち着かせると、揺れが止まる時点で児は落ち着かなくなります。抱っこは揺れで児を落ち着かせるのではなく、姿勢で落ち着かせるように抱っこの仕方を習得します。また落ち着いた抱っこの姿勢のままコットに寝かせるポジショニングのつながりも安静保持のコツになります。

②児にとって呼吸が楽であれば、腹臥位保持は有用です。ただし、腹臥位が苦手で呼吸苦を示す児も少なからずいます。腹臥位での呼吸苦や落ち着かない状況を認める児は側臥位や背臥位に体位を変換することは、児の安静保持のために必要な考え方です。またこの時期は将来の発達の方向性を決める大事な時期であり、発達の成熟を抑制するような一辺倒の体位保持はリスクがあります。どの体位をとっても呼吸に変化を認めないような児は、多様な体位をとることで、多様な発達(感覚運動経験)を積むことができます。背臥位は上下肢の拳上や視聴覚の発達、側臥位は体幹の安定性や対称的な発達、腹臥位は頭部回旋や拳上また下肢のキッキングなどを促します。体位別に優位に成熟する発達があることを理解してもらう必要があります。

③抱っこが困難で一時的に安静保持が必要な児が腹臥位保持を行い落ち着く場合は、腹臥位は有用です。落ち着きがなく一時的な安静保持を必要とする場合、児をより屈曲位(胎児姿勢)に近づける、児を包むバスタオルなどをよりきつめにする、ポジショニングで児の体重が一番かかる箇所をポジショニング用具でしっかり支えるなどの工夫がポイントになります。[理学療法士 木原秀樹]

Q12:「保育器内、ポジショニング、囲い込み」</p> <p>新生児看護初心者で、日々悩むことが多いです。保育器内で囲みを作って赤ちゃんがポジショニングをされているのをみますが、どの様に作られているのでしょうか?適応や利点なども教えて下さい。
A12:「ロールタオル、U字型、並べる」

保育器内の囲い込みのポジショニングの方法は様々です。基本的にバスタオルまたはハーフタオルをロール状に巻き、U字型に曲げて、赤ちゃんを囲むパターンが多いです。ただ1本のロールタオルをU字型にして用いると、児に対して、囲みの高さが低くなりやすいため、児の姿勢が保持できず姿勢が崩れることが多いです。そのため、ハーフタオルをロール状にしたものを3本または4本用意し、そのロールタオルをU字型またはロの字型に並べ囲む方法が有用です。挿管や安静が必要な児はしっかりと包み込み、児の動きを許す移行期の時期は、緩やかな包み込みや囲い込みを導入します。囲い込みは児の観察が行いやすい利点はありますが、落ち着きのない児や安静が必要な児の場合は包み込みのほうが有用です。[理学療法士 木原秀樹]

Q13:「人工呼吸器管理、未頸定、上体挙上位」</p> <p>人工呼吸器管理の未頸定の1歳児で身長は大きく80cmほどあります。ベッド上で児の負担感が少ない上体挙上位の姿勢を保持するために、使いやすい椅子やポジショニング方法などアドバイスをお願いします。
A13:「三角マット、クッションチェア、ベビーカー」

①簡易的な上体挙上位としてベッドをギャッジアップし体幹を保持しますが、ギャッジアップできない場合は、クッションチェアの下に置く三角マットのような形状マットを児の下に置き体を起こします。②安定感ある椅子はクッションチェア(三角マットで起こす角度を低く調整)で、首の周りを芯の入ったロールクッション(または旅行用の首を支えるエアクッション)で覆い頭を安定させます。体幹が側方に崩れないように脇をクッションやタオルなどで支えます。クッションチェアの購入は、身体障がい者手帳を取得していない場合は、日常生活用具給付事業(介護・訓練支援用具)を利用します。③ベッドから離れることができる場合は、ベビーカーB型(大きめの児用)をベッドサイドに持ち込み座らせることもよく行う方法です。どの方法も人工呼吸器が児より高い位置にならないように注意します(呼吸器の回路に溜まる水が児に流れこまないように)。[理学療法士 木原秀樹]

Q14:「上体挙上位、長時間保持、リスク」</p> <p>新生児のポジショニングを導入する際に上体挙上位(角度30から45度)の保持が増えています。落ち着かない、反り返りやすい、胃食道逆流症など要因は様々です。上体挙上位を行う際、四肢体幹を屈曲位に保持し抱っこに近い姿勢をとっています。長時間の上体挙上位保持は児にとってリスクはありますでしょうか?
A14:「支持点・支持面、反り返り軽減、同一体位制限」

反り返りやすい児の場合、背臥位では全身が支持面となるため、重力に曝され引っ張られるようにより反り返りやすくなります。上体挙上位で四肢体幹の屈曲位を保持すると、骨盤に支持点ができ、児の体幹を屈曲方向に持っていきやすくなるため、反り返りが軽減できます。また上体が起きている分、重力方向に引かれる児の支持面の面積が少なくなり、反り返り助長も軽減されます。上体挙上位を長く保持すると、頸部や体幹筋力が充分でない児の疲労が増すことや、他の体位と同様に皮膚損傷(褥瘡)リスクが高まります。一般的に同一体位を2-3時間以上は保持しないという考え方で良く、児がリラックスする(力を抜く)経験、自分で自己鎮静する経験(手を口へ持っていく、自分で頸部や体幹を屈曲方向へ持っていくなど)を積んでいくことで、徐々に反り返りが減少していきます。[理学療法士 木原秀樹]

Q15:「超早産児、腹臥位、足部外反位」</p> <p>修正22〜24週の挿管中の児を腹臥位で管理していると、股関節は開排位・足部は外反位となり良肢位姿勢が取れません。抱き枕を使うと児の姿勢が不安定になり計画外抜管リスクが高くなることが懸念され、また皮膚も脆弱なため、最小限のポジショニングを行いたいです。
A15:「治療・ケア優先、下肢伸展傾向、足首ロール」

修正22-24週の出生直後の超早産児は皮膚が脆弱であり、慎重な観察も必要なため、ポジショニング導入も治療やケアを優先することになります。したがって児は胎児姿勢のような屈曲位はとらず、しっかりと包み込むことは行わず、できる範囲の高さの抱き枕を置き、四肢を屈曲・内転位にし、全身を緩やかに包み込みます。その際、下肢を屈曲すればするほど股関節の開排位(外転角度)は大きくなり、足部は外反しますので、下肢は伸展傾向とし、ロール状コットンを足背側足関節に置き、足部の中間位を保持します。皮膚を含めた児の状態が安定してきたら、胎児姿勢に近いしっかりと包み込んだ、児の筋緊張を高める良肢位姿勢を保持します。足部の外反位での拘縮が残った場合は、定期的に関節可動域練習を開始します。[理学療法士 木原秀樹]

Q16:「側臥位、背臥位、体位変わる」</p> <p>側臥位を保持しているとじきに背臥位になってしまう赤ちゃんがいます。原因はなんでしょうか?
A16:「ロールタオル、ずれる、肩甲帯後退」

側臥位は身体を支える支持面が狭いため、赤ちゃんにとって不安定な体位であり、自然に背臥位になりやすい児は多いです。原因の多くは、側臥位保持のために背中に置くロールタオルやクッションなどが、児の動きで徐々に後方へずれて、それとともに背臥位になってしまう場合です。背中に置くロールタオルやクッションそのものが動かないように固定することが必要です。また、側臥位での上側の肩甲帯が後退しやすい(上肢が外転しやすい)、頸部が伸展(上側方向に)回旋しやすい児も背臥位になりやすいです。頸部を軽度屈曲させ、上側の肩甲帯が後退しないよう、上肢を体幹の前に出します。[理学療法士 木原秀樹]

Q17:「安全帯、注意点、ポジショニング」</p> <p>NICU入院中の児に対する安全帯使用時の注意点やポジショニングについて教えてください。
A17:「上肢伸展位、骨折、胎児姿勢保持」

人工呼吸器や経管栄養などチューブの抜管予防のためにミトンなどの安全帯を使用される場合があります。可能であればポジショニングで安静を保ち、安全帯の使用は控えます。安全帯の導入が必要な場合、通常は口元にあるチューブに手が届かないように、上肢伸展位でチューブから一番遠い位置に手を固定することが多いです。そうすると、ある程度激しく動こうとしたときに、易骨折性のある児は安全帯のテンションにひかれ骨折する可能性があります。安全帯を導入する場合は、上肢は屈曲位で顔近くに置き、胎児姿勢保持のポジショニングを行うと、より落ち着きやすくなります。[理学療法士 木原秀樹]

Q18:「易骨折性、体位変換、注意点」</p> <p>易骨折性のある早産児の体位変換時の注意点について教えてください。
A18:「マットレス、傾斜、ホールディング」

易骨折性の高い児の急性期管理では、児自身は動かさず、児の下に敷いてあるマットレスやポジショニング用具そのものを傾けて軽度の体位変換を行います。児自身を動かせる状態になった場合は、胎児姿勢で児を両手で包み込むホールディングを行い、ホールディングをしたまま四肢は屈曲内転位、体幹を捩じらず、ゆっくり転がすように体位変換を行います。[理学療法士 木原秀樹]

Q19:「反り返り、抱っこ、指導方法」</p> <p>反り返りが強い赤ちゃんの抱き方や両親への指導方法を教えてください。
A19:「突っ張り始め、押さえこみ、お座り姿勢」

反り返りが強い赤ちゃんには、反り返りが始まる身体の部位があります。通常は頸部や腰から突っ張り始め、全身が反り返ります。抱っこの際は、頸部や腰が突っ張らないように、抱っこする腕でしっかり押さえこみます。頸部はやや屈曲位、腰は股関節を90度以上屈曲することで押さえこみができます。最初、児は反り返ろうとかなりの力で突っ張ってきますが、反り返りができないとわかると、全身の力がスッと抜けてきます。それまで押さえこみが必要です。抱っこは全身が丸くなる姿勢となりますが、前抱きは児を丸い姿勢で抱きにくく、背臥位に近い横抱きは、重力の影響でより反り返りやすくなります。両親には座っていただき、児がお座りするような姿勢で横抱きを行うと、重力の影響も受けにくく、丸くなる姿勢で抱きやすくなります。児の頸部や腰の押さえこみが怖い、赤ちゃんがかわいそうと、両親は最初不安を抱きますが、そこはグッと心を鬼にして、押さえこむよう指導します。より児を落ち着かせる場合は、児の全身をバスタオルで包み込みます。[理学療法士 木原秀樹]

Q20:「おひなまき、股関節脱臼、鎮静促進」</p> <p>GCU入院中や退院後の赤ちゃんの“おひなまき”は、股関節脱臼のリスクを高めると聞きます。落ち着きのない児に鎮静化を促す目的で“おひなまき”を行うことは良いことではないかと思いますが、どのように支援すれば良いでしょうか?
A20:「おくるみ、股関節形成不全、股関節屈曲外転外旋位」

“おひなまき”つまり“おくるみ(スワドル・包み込み)”は、赤ちゃんを落ち着かせたいときに行います。生後3ヶ月頃までは、股関節を内転位で屈曲保持することでs、股関節の脱臼(発育性股関節形成不全;元 先天性股関節脱臼)リスクが高まります。そのため股関節の屈曲・外転・外旋位を保持することで、大腿骨頭が臼蓋に収まりやすくなり、“おくるみ”も安全に行えます。胎児が母体の子宮内で育つ妊娠後期では、児の体が大きくなるにつれ、足部は体幹や頭に近づくほど、股関節は屈曲・外転・外旋位を保持しています。ある地域で古くからの慣習として、出生後から1歳頃まで日常で“おくるみ”を行っていた際は、股関節は屈曲・内転位で保持され、その地域の赤ちゃん達の股関節脱臼率が非常に高かったという報告があります。股関節の肢位に気をつければ、落ち着きのない児は鎮静化を促す目的で、ややきつめの“おくるみ”でも、安全に赤ちゃんに安心をもたらしますことができます。[理学療法士 木原秀樹]

Q21:「バスタオル、U字型、ポジショニング」</p> <p>当院ではバスタオルを三角にしてから巻き、U字型に置き児を囲うようにしています。オンライン講座にあるいくつかのロールタオルをL・U字型に並べるポジショニングが良い理由は何でしょうか?
A21:「囲い込み、高さ、姿勢安定」

バスタオルを長めのロール状に巻き、児をU字型で囲む場合、ロールが細くなるため、児を囲む高さが低めになります。児を囲むロールタオルの高さが低めになると、①児をしっかり支えることができず、安定的な姿勢を保ちにくくなる、②手足が囲い込みの外に出やすくなり、児が落ち着きにくくなる、③U字型はロールタオルが真っすぐ(I字型)に戻る力が働きやすく、児を支えているロールがずれていく、砂嚢を多く使用しなくてはいけない、などの負の影響が出やすくなります。ロールタオルを短く太く作り、そのロールを何本か組み合わせL字型・U字型で児を囲むことで、高さや支えの安定性が確保され、児の姿勢が安定するなどの有用性があります。[理学療法士 木原秀樹]

Q22:「ポジショニング、どのようなケア」</p> <p>ポジショニングとは、どのようなケアですか?
A22:「姿勢調整、体位変換、良肢位保持」

ポジショニングとは、いわゆる“姿勢調整・管理”のことです。ポジショニングは、体位変換と良肢位保持から成ります。体位変換では、定期的に体位(背臥位・側臥位・腹臥位など)を変えます。良肢位保持では目的に沿った姿勢を調整します。ポジショニングの目的には、安静保持、皮膚の保護呼吸器合併症の予防、発達の促進などがあります。ポジショニングは早産児、正期産児で治療が必要な児、長期臥床が見込まれる重症児など、NICU・GCUに入院するすべての児らが対象となります。また入院した直後から退院するまで行い、必要があれば在宅においても継続します。[理学療法士 木原秀樹]

Q23:「リハビリスタッフ、介入、欠かせない点」</p> <p>リハビリスタッフです。NICUで介入できる時間・頻度が少ない現状ですが、ポジショニングの介入でこれだけは欠かせない・外せない点などがあれば教えてください。
A23:「ポジショニング用具、体幹や臀部、保持」

ポジショニング用具で赤ちゃんの体幹や臀部がしっかり保持できているか確認します。入院している児は上体挙上位でケアされていることが多いですが、用具での保持が不十分で、半分空中に浮いているような状態であることが少なくありません。用具で体幹や臀部が保持できていれば、安静を保ちやすく、覚醒時には手足を動かして感覚運動経験を積みやすくなります。呼吸循環が安定している時は、手足で自分の体や用具を触れることができるように、児の前方に空間を作ります。[理学療法士 木原秀樹]

Q24:「ロールタオル、より良い方法」</p> <p>ロールタオルを使ったポジショニングで、こうしたらもっとより良い方法などありましたら教えてください。
A24:「長く細い、高さ足りない、短く太く」

ロールタオルを用いる際、バスタオル1枚で作った長く細めのロールタオルでは、赤ちゃんの体幹や臀部をしっかり保持できないことや、ロールタオルの高さが足りず児の手足が外側に飛び出してしまうことがあります。バスタオルを二つ折りまたは三つ折りした後ロール状に巻き、短く太めのロールタオルを2-3つ用意し、各タオルで体幹や臀部を支えることで児は安定した姿勢が保持しやすく、手足は外側に飛び出しにくくなります。また、児の動きによってロールタオルがずれると姿勢が崩れますので、ロールタオルがずれないように工夫します。[理学療法士 木原秀樹]

Q25:「嚥下機能、流延、姿勢」 </p> <p>嚥下機能の低下があり、流涎の多いお子さんの側臥位以外の良いポジショニングや姿勢があれば教えてください。
A25:「誤嚥リスク、涎、口外」

涎が多く誤嚥リスクが高いお子さんの場合は、側臥位保持で後頭部の高めにすることで口腔から涎を口外へ流れやすくすることできます。側臥位保持が困難な場合や他の体位に定期的に変換する場合は、背臥位や腹臥位を取ります。最も涎を口外に流しやすい体位は顔が下向きになる腹臥位です。腹臥位では児にあった用具を用意しますが、腹臥位保持が困難な場合は、半腹臥位の保持でも有効です。背臥位では、上体挙上をせず、体幹より頭がわずかに下がるよう肩枕を低めにセットすることで、涎が気管に流れ込みにくくなります。その際、定期的に顔を左右に向けることで、涎は頬内側に溜まりやすくなり、溜まった唾液を持続吸引または定期吸引します。[理学療法士 木原秀樹]

Q26:「呼吸循環、運動面、配慮」</p> <p>呼吸循環と運動面を考慮したポジショニングで配慮することを教えてください。
A26:「安静、腹臥位、運動制限」

呼吸循環動態が不安定な児は、安静を保つことを目的に姿勢を調整します。また腹臥位(上体挙上位)はどの体位よりも呼吸循環動態への負荷を軽減するため、優先して保持します。人工呼吸器管理のある児は、呼吸調整されているため、腹臥位でのポジショニングにおいて、腹部圧迫を避けるため胸部のみの抱き枕ではなく、腹部まで広い面で児を支える抱き枕の方が、児の姿勢が安定し、安静をより保ちやすくなります。呼吸循環動態が不安定な児は腹臥位保持が優先となりますが、腹臥位ばかり保持していると、頭・体幹・手足などの変形や関節可動域などの運動制限が起きやすくなります。ほかの体位にも変換することで、変形や運動制限が起きないように配慮します。[理学療法士 木原秀樹]

Q27:「ディベロップメンタルケア、配慮」</p> <p>ディベロップメンタルケアをふまえてのポジショニングで配慮することを教えてください。
A27:「気持ち、組織化行動、非組織化行動」

ディベロップメンタルケアの本質は、児の気持ちや状態に合わせて各ケアを実施および調整し、発達・成長を促すことにあります。呼吸循環動態が不安定な時期は安静期として、安静を目的にしたポジショニングを実施します。呼吸循環動態が安定してき時期は移行期として、感覚運動経験を積むことを目的にしたポジショニングを実施します。退院近い時期は成長期として、ポジショニングの継続の必要性を判断します。移行期では、安定化サイン(組織化行動)とストレスサイン(非組織化行動)の優位性を評価し、安定化サインが優位な場合は、ポジショニング用具を部分的に緩めていき、より感覚運動経験が積めるように配慮します。[理学療法士 木原秀樹]

Q28:「早産・低出生体重児、特徴、発達面」</p> <p>新生児(早産・低出生体重児も含む)の特徴と発達面から見たポジショニングのポイント(見るべきこと・注目点など)を教えてください。
A28:「胎内、感覚運動経験、ボディーイメージ」

満期産で出生した新生児は、胎内において手で顔や体に触れる、おしゃぶりをする、足で子宮壁を蹴るなどの感覚運動経験を積み、自身のボディーイメージがある程度出来ています。ボディーイメージがある児は、次に外界との接触を試み、視聴覚がより発達し、両親との愛着形成も促されます。しかし、早産児や早産に伴う低出生体重児は、充分な感覚運動経験を積まずに出生するため、ボディーイメージの形成が不十分であるばかりでなく、発達そのものが停滞しやすくなります。ポジショニングを実施する際は、本来児が子宮内で経験する感覚運動を試みようとしているかを観察し、感覚運動経験を促す体位の選定、姿勢作りを図ります。[理学療法士 木原秀樹]

Q29:「極低出生体重児、在宅移行、コット内」</p> <p>NICUで理学療法士はダウン症候群などの先天性疾患や極低出生体重児のお子さんに介入することが多いですが、大きな合併症のない極低出生体重児のお子さんで在宅移行に向けて、コット内のポジショニングはいつ頃まで行うべきか教えてください。
A29:「筋緊張、行動、観察」

コットに移行したお子さんでは、基本的にポジショニングは必要ありません。ただし、児の筋緊張と行動を観察し、安静時に手足が屈曲位に保持できないもしくは反り返りやすい場合や、安定化サイン(組織化行動)よりストレスサイン(非組織化行動)が優位に目立ち、児が落ち着きにくい場合は、ポジショニングを継続します。コット内でポジショニングを実施する必要がある場合は、退院後も在宅においてポジショニングの継続が必要な可能性が高いため、ご家族にポジショニングの指導を行います。[理学療法士 木原秀樹]

Q30:「ポジショニング、評価、項目」</p> <p>ポジショニングを考える際に特に注意する評価項目などあれば教えてください。
A30:「安静、感覚運動経験、目的」

赤ちゃんにポジショニングを実施する際は、主に安静を目的にするのか、感覚運動経験を目的にするのか、ポジショニングが必要かどうかを検討します。ポジショニングでの評価は、児の病態(特に呼吸循環動態)により安静保持が必要かどうかを評価するほかに、児の筋緊張と行動を評価します。評価方法・基準についてはQ29を参考にご覧ください。[理学療法士 木原秀樹]

Q31:「家族、方法、伝達」</p> <p>家族にポジショニングの方法をお伝えする際に、心がけていることや注意する点などがあれば教えてください。
A31:「各体位、目的、再現」

ポジショニングには体位変換と良肢位保持があります。体位変換では、定期的に体位を変え、多様な体位をとることが、児の発達や呼吸の改善・変形予防などに有効であることを理解していただきます。また各体位(背臥位・側臥位・腹臥位・上体挙上位など)での目的を理解していただきます。その目的を叶えるための良肢位保持を実際ご家族に行ってもらい、自身で再現できるようになるまで指導します。定期的に体位変換を行う中でも、児の状態に合わせ、いまどのような体位をとるのが良いのかご家族が考えられるようになることが大事です。[理学療法士 木原秀樹]

Q32:「早産児、側臥位、方法」</p> <p>早産児では側臥位で安定した姿勢を保てないことが多いです。タオルの用い方など、具体的なポジショニング方法を知りたいです。
A32:「用具、高く、ずれない」

早産児は生まれつき全身の筋緊張が低いため、一定の姿勢を保ち続けることが困難な場合があります。各体位(背臥位・側臥位・腹臥位など)では、体の支持面が狭い側臥位は、適切にポジショニングを実施しないと姿勢が崩れやすいです。どの体位でも同様ですが、児の体幹より高いポジショニング用具(ロールタオルなど)を用意し、用具での支持面が広くとれるようにします。側臥位では、児の後頭部・体幹(背中)・臀部を用具で支えます。さらに抱き枕を用いることで、姿勢が安定します。ポジショニングで姿勢が崩れやすい原因に、児を支えている用具の低さとずれがあります。ロールタオルなど用具は児より高く、またずれないように配慮します。[理学療法士 木原秀樹]

Q33:「枕、どのような、良い」</p> <p>ポジショニングでの枕はどのようなものが良いでしょうか?
A33:「首、肩、ロールタオル」

赤ちゃんの枕は首や肩を支えるようにロールタオルや成形したクッションなどを用います。特に早産児は後頭部が大きく凸になりやすく、側頭部が扁平になりやすいため、背臥位では、顔が真横に向かず、正中線から45°以内の範囲で正面を向くように首や肩を枕で支えます。側臥位では、首を支えるほかに、肩幅と頭部の幅の差を埋めるように側頭部に薄めの枕を敷きます。また側臥位では、頭部は中間位でわずかに屈曲位を保持します。腹臥位では、他体位と同様に首や肩を支えますが、顔が安楽に横に向けるように(頚部が伸展し首が反らない)、体幹より頭部がやや低くなるよう、抱き枕より頭を支える枕を低めに設定します。[理学療法士 木原秀樹]

Q34:「早産児、緩める、時期」</p> <p>早産児でポジショニング用具を緩めていく時期がわかりません。赤ちゃんの行動からどのように評価していくのか、ポジショニングを緩めていく方法を具体的に知りたいです。
A34:「安静期、移行期、観察」

早産児において、修正30-32週未満(安静期:挿管中)では、安静保持・屈筋緊張を高める目的で、胎児姿勢に近い屈曲姿勢で包み込むポジショニングを実施します。修正30-32週以降(移行期:抜管後)では、感覚運動経験を増やす目的で、ポジショニング用具を緩めていきます。用具を緩めるかどうかの評価として、児の筋緊張と行動を観察します。筋緊張の評価では、各体位で児のホールディングを行い、児が落ち着いたら手を離し、しばらく姿勢が保てるか観察します。行動の評価は、安定化サイン(組織化行動)やストレスサイン(非組織化行動)を観察し、どちらが優位にみられるか判定します。姿勢が崩れずしばらく保てる場合、ストレスサインより安定化サインが優位にみられる場合は、用具を緩めていきます。用具で頭部・体幹・臀部は保持したまま、手足で自分の体や用具を触れることができるように、児の前方に空間を作ります。[理学療法士 木原秀樹]

Q35:「人工呼吸器管理、落ち着く、侵襲少ない」</p> <p>人工呼吸器管理中の児が落ち着くポジショニングの方法や侵襲が少ない体位変換の方法を教えてください。
A35:「圧迫、ホールディング、持続」

ある程度週数が経た児の人工呼吸器管理では、児が落ち着かず、頭部を動かしたり、体幹が動くことで計画外抜管を起こすリスクが高くなります。呼吸循環動態が安定せず人工呼吸器管理が必要な児は、安静保持を目的としたポジショニングを実施します。胎児姿勢に近い屈曲姿勢を保持し、タオルや用具で軽く圧迫するように包み込むことで(ホールディングでの圧迫に近い)、児は安静を保持しやすくなります。体位変換では、児をホールディングし、その姿勢のまま児を空中に持ち上げず、ゆっくりと回転させていくことで侵襲が少なくなります。体位変換は児がどの体位であってもホールディングを持続できるかがポイントになります。[理学療法士 木原秀樹]

Q36:「人工呼吸器管理、体位変換、方法」</p> <p>人工呼吸器管理中の児の体位変換の方法を教えてください。
A36:「ホールディング、顔向き、90度回転」

人工呼吸器管理中の児では、最初に体位を変えたい方向に顔を向けます。顔を向ける際は、挿管チューブの口鼻の固定付近を持ち、抜管しないように細心の注意を払います。その後、児をホールディングし、その姿勢のまま児を空中に持ち上げず、顔向き方向にゆっくりと90度回転させます。頭部→体幹の順で体位変換(背臥位←→側臥位←→腹臥位)します。[理学療法士 木原秀樹]

Q37:「正期産児、呼吸障害、抱き枕」</p> <p>3,500~4,000g程度で出生した正期産児で、呼吸障害があり腹臥位を取りたい時、体の下に抱き枕は必要でしょうか。使用する場合はどれくらいの厚さが必要でしょうか?
A37:「努力呼吸、軽減、深吸気」

呼吸障害がある児に対してポジショニングを実施する場合、安静保持により努力呼吸を軽減する、陥没呼吸などの換気量減少を改善するために深吸気が行いやすい姿勢を作ることが目的になります。抱き枕を用いたほうが安静を保ちやすい児では、抱き枕を使用します。また正期産児の場合、筋緊張が良好であり、児をロールタオルなどで囲むだけである程度、手足や体幹の屈曲姿勢が保持できる場合は、腹部に空間ができ、深吸気が行いやすくなりますので、抱き枕は用いません。抱き枕を用いたほうが安静を保ちやすく、屈曲姿勢が保持しにくい児は、胸部だけの抱き枕を用い、腹部に空間を作ります。抱き枕は、児の体幹と同等の幅で、四肢は中間位で肘と膝で児自身を支えることができる厚さ(高さ)で用います。[理学療法士 木原秀樹]

Q38:「標準体重、正期産児、必要」</p> <p>標準体重がある正期産児でも保育器やコット内でのポジショニングは必要でしょうか?
A38:「姿勢、行動、実施」

病態により正期産児でも保育器内で治療・ケアが必要な場合があります。保育器やコット内であっても、児が各体位を支えなしでも保てる、手足を動かしても屈曲姿勢に戻れる、ストレスサイン(非組織化行動)より安定化サイン(組織化行動)が優位にみられ落ち着きやすい場合は、ポジショニングの実施は必要ありません。その反対の状態であれば、ポジショニングの実施が必要となります。正期産児でも支えなしで側臥位を保つことは困難な場合もあるため、頭部・体幹・臀部をロールタオルで支えると安定した姿勢がとれます。[理学療法士 木原秀樹]

Q39:「ダウン症候群、両親、アドバイス」</p> <p>筋緊張の低いダウン症候群などの赤ちゃん、正期産ですがポジショニングは必要でしょうか。退院に向けて両親への指導でポジショニングついてアドバイスできることはありますか?
A39:「退院後在宅、筋緊張、覚醒」

ダウン症候群の赤ちゃんなど、筋緊張が低い児は退院後在宅においてもしばらくポジショニングが必要な場合が多いです。筋緊張が低い児は、各体位(背臥位・側臥位・腹臥位など)で姿勢が保ちにくく頭や手足の動きが乏しくなり、首のすわりや手足で遊ぶなどの発達がより遅くなる傾向があります。筋緊張を高めることで、発達も促されやすいという流れになります。在宅において満遍なく各体位をとることで筋緊張は高まりやすくなります。特に支えがなくても数分間、側臥位が保持できるほど筋緊張が高まるようになるまで(生後2-3ヶ月が目安)、各体位で屈曲姿勢を保つ囲い込みや包み込みのポジショニングを行うことを指導します。筋緊張が低い児は、覚醒が低いことも多いため、日中は覚醒を促すことも大事です。[理学療法士 木原秀樹]

Q40:「各スタッフ、方法、統一」</p> <p>各スタッフで体位変換の方法に違いがあります。方法を統一したほうが良いでしょうか?
A40:「基本的な考え方、共有、優しい」

スタッフ間で体位変換の手技を統一することは、NICU経歴や経験年数の幅もあり、困難な場合が多いです。ただし、赤ちゃんに優しい体位変換の方針に基づき、基本的な考え方は全スタッフで共有する必要があります。赤ちゃんに優しい体位変換の考え方として、児の発達・病態に合わせたポジショニングの実施、胎児姿勢を保ち、児を空中に浮かせないストレスが少ない体位変換などがあります。例えば腹臥位に体位を変換する際、抱き枕を児が抱えたまま体位変換を実施するか、腹臥位をとってから抱き枕を入れるかの方法の違いもあります。どちらも適切な方法であり、児がびっくりしないようゆっくり回転させていくことのほうが、抱き枕を抱えるタイミングより大事なポイントになります。[理学療法士 木原秀樹]

Q41:「入院時、全員、囲い込み」</p> <p>NICU入院時は、週数・体重に関係なく保育器での治療・ケアになり、児の周りにロールタオルをコの字型に置き、囲い込みのポジショニングを行っています。入院児のほとんどが後期早産児、正期産児であり、全員に同様のポジショニングを行う必要がありますでしょうか?
A41:「短く太め、ロールタオル、コの字型」

バスタオル1枚で作った長く細めのロールタオルより、短く太めのロールタオルを2-3つ用意し、コの字型に囲い込むポジショニングのほうが、児の体幹や臀部をしっかり保持でき、手足が外側に飛び出すことも少なくなるため、児の姿勢は安定します。各体位を支えなしでも保てる、手足を動かしても屈曲姿勢に戻れる、ストレスサイン(非組織化行動)より安定化サイン(組織化行動)が優位にみられ落ち着きやすい場合は、ポジショニングの実施は必要ありません。[理学療法士 木原秀樹]

Q42:「用具、選び方、緩め方」</p> <p>どのような赤ちゃんにどういうポジショニングが必要か、ポジショニング用具の選び方、用具を緩め始めるタイミング・緩め方について教えてください。
A42:「市販品、方法統一、ケア一定」

早産児において、修正30-32週未満(安静期:挿管中)では、安静保持・屈筋緊張を高める目的で、胎児姿勢に近い屈曲姿勢で包み込むポジショニングを実施します。修正30-32週以降(移行期:抜管後)では、感覚運動経験を増やす目的で、ポジショニング用具を緩めていきます。ロールタオルを用いる場合、児を支えるロールタオル自体がずれ、姿勢が崩れてくることがあるため、子宮内発育遅延での低出生体重児も含め、出生体重2000g未満の児では、用具がずれにくいポジショニングマットなど市販品を用いると、ポジショニング方法が統一されやすく、スタッフのケアも一定になり児の姿勢も安定します。用具を緩めるタイミング・緩め方についてはQ34を参考にご覧ください。[理学療法士 木原秀樹]

Q43:「腹臥位、抱き枕、基準」</p> <p>腹臥位での抱き枕の基準について教えてください。
A43:「体幹、四肢、高さ」

筋緊張が良好であり、手足を動かしても屈曲姿勢に戻れる、ストレスサイン(非組織化行動)より安定化サイン(組織化行動)が優位にみられ落ち着きやすい児の場合は、腹臥位での抱き枕は必要ありません。筋緊張が低く、手足が外側に外転・伸展しやすい児では、腹臥位で抱き枕を用います。抱き枕は、児の体幹と同等の幅で、四肢は中間位で肘と膝で児自身を支えることができる厚さ(高さ)で用います。[理学療法士 木原秀樹]

Q44:「抱っこ、両親、指導方法」</p> <p>上手な抱っこの方法や両親への指導方法を教えてください。
A44:「頸部・背中・臀部、保持、圧迫」

抱っこでは、全身屈曲位となるように赤ちゃんの頸部・背中・臀部をしっかり保持することが基本です。落ち着きにくい児では、首や腰から反り返ってくる場合が多く、反り返りに負けず、落ち着くまで首や腰を押さえ込むことが指導ポイントになります。また、児の体を圧迫するように抱っこすることで、落ち着きやすくなります。児を支えることで精一杯な両親では、バスタイルなどで包み込み抱っこする方法を指導します。揺らさなくても児が落ち着けるような抱っこが出来れば、上手な抱っこといえます。また縦抱きや横抱きなど、児の好きな抱っこ姿勢も確認し、指導を行います。Q19もご参照ください。[理学療法士 木原秀樹]

Q45:「寝かせる、啼泣、方法」</p> <p>寝かせると啼泣してしまう赤ちゃんのポジショニングの方法を教えてください。
A45:「抱っこ、同じ姿勢、全身屈曲位」

赤ちゃんが抱っこで落ち着いた後、抱っこと同じ姿勢でベッド上に寝かせると落ち着いたままでいられます。啼泣する児は寝かせようと下していくと泣き出す場合が多いです。①揺らさない抱っこで落ち着く→②抱っこ姿勢(全身屈曲位)のままベッド上に下す→③落ち着くまで全身屈曲位で保持する→④軽く圧迫するようにバスタオルで包み込む、の手順で寝かせます。抱っこしていないと落ち着かない児は、自ら落ち着けるよう、自ら手を口元へ持っていく、見たり聞いたりする、丸くなる姿勢をとるなどの行動発達を促すことも必要です。[理学療法士 木原秀樹]

Q46:「光線療法中、啼泣、方法」</p> <p>光線療法中で啼泣してしまう赤ちゃんが落ち着けるような方法を教えてください。
A46:「落ち着きにくい、囲い込み、屈曲位」

光線療法中はアイマスクを装着し、裸の場合もあるため、落ち着きにくい赤ちゃんがいます。そのような児では、ロールタオルでの囲い込みのポジショニングを行います。囲い込みでは、四肢は屈曲位で、臀部をしっかり保持すると落ち着きやすくなります。また、脚と脚を交差するように組んだり、手を口元や体の中央へ持っていき、手足をしばらく保持してあげると、さらに落ち着きやすくなります。[理学療法士 木原秀樹]

Q47:「嘔吐、頻回、ポジショニング」</p> <p>嘔吐が頻回の赤ちゃんのポジショニングの方法を教えてください。
A47:「トロミ付きミルク、げっぷ促し、上体挙上位」

嘔吐が頻回な赤ちゃんでは、胃食道逆流症(GERD)、吸綴での空気嚥下などの有無などを確認します。GERDを持つ児では、トロミ剤の使用やトロミ付きミルクの使用も検討します。空気嚥下の多い児では、縦抱きでの哺乳中後のげっぷの促しを行います。それでも嘔吐が減らない場合、哺乳の基本は少量・頻回哺乳になります。ポジショニングとして哺乳後は上体挙上位(30度以上)での右側臥位や腹臥位が有用です。体位は最低でも30分保持し、可能であれば1時間は実施します。[理学療法士 木原秀樹]

Q48:「産科病棟、安全、腹臥位」</p> <p>産科病棟で出生した赤ちゃんで、安全・安楽な腹臥位の方法を教えてください。
A48:「窒息、回避、硬めマットレス」

赤ちゃんが正期産児の場合、児にハンカチテストや腹臥位での頭部挙上反応を確認します。背臥位の児の顔にハンカチを被せたときに、手でハンカチを払おうとしたり、首を振って落とそうとする反応が見られます。また腹臥位で頭部を正中位に向けると、窒息しないように顔を左右に向けたり、頭部を挙上する反応が見られます。そのような反応が見られる児は、窒息による乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが小さく、安全に腹臥位を保持できます。腹臥位保持はやや硬めのマットレス上とし、顔が下に向いた際の窒息を回避します。生後1-2ヵ月頃は、全身が屈曲位で保持できるよう囲い込む・包み込むと安楽に腹臥位が保持できる児もいます。[理学療法士 木原秀樹]

Q49:「産科病棟、安楽、姿勢」</p> <p>産科病棟で出生した赤ちゃんが安楽な姿勢のポイント、してはいけない姿勢を教えてください。
A49:「生理的な屈曲姿勢、同じ体位、長時間保持」

生後1-2ヶ月の赤ちゃんは生理的な屈曲姿勢が優位になります。自ら四肢を屈曲し、全身が丸くなるような姿勢をとることができる児は、安楽で落ち着きやすいです。特に腹臥位では、屈曲姿勢を保持しやすいですが、背臥位では重力の影響もあり、屈曲姿勢を保持しにくい児もいます。そのような児では、生後1-2ヶ月間ロールタオルでの囲い込みのポジショニングを行うことも有用です。してはいけない姿勢はありませんが、乳幼児突然死症候群(SIDS)リスクが高いため、両親が見ていない場面での腹臥位保持、頭部や体幹の変形(扁平)・発達の停滞リスクが高いため、背臥位しか保持しない、同じ体位を長時間保持することは避けます。[理学療法士 木原秀樹]

Q50:「コット、ロール状、囲い込み」</p> <p>コットの児のポジショニングで、現在は週数等関係なく、一律バスタオルでロール状にしたものを囲い込みとして使用していますが、これでよいか教えてください。
A50:「ロールタオル、観察・評価、おくるみ」

コット管理の児であれば、ある程度、身長・体重もあると思いますので、ポジショニングでの用具は、基本バスタオルでのロールタオルで良いです。ただし、コット管理の児では、ポジショニングが必要でない児、バスタオルでの包み込みが良い児もいますので、観察・評価により選択します。児の行動を観察し、ストレスサイン(非組織化行動)より、安定化サイン(組織化行動)が優位に観察される、さらにポジショニングで保持したい体位(背臥位・側臥位・腹臥位)において児をホールディングし、落ち着いた後にホールディングしていたケア者の手を外し、胎児様姿勢でしばらく保持できる場合は、ポジショニングは必要ありません。また、落ち着きがない・啼泣しやすい児は、バスタオルでややきつめに包み込む(おくるみ)でのポジショニングが有用です。[理学療法士 木原秀樹]

Q51:「ポジショニング、緩める、ポイント」</p> <p>児が成長してきてのポジショニングを緩める時のポイントや注意点について教えてください。
A51:「行動、制限、感覚運動経験」

早産児や正期産児において、入院後しばらくは治療・ケアを優先とした安静保持目的のポジショニングを導入します。ただし、安静保持目的のポジショニングは、しっかりと囲い込む・包み込むため、児の行動が制限され、発達の過程がより遅れる可能性があります。特に早産児では、胎内での行動(感覚運動経験)を積むことで、自身のボディーイメージを形成しますので、行動(動く)ことは発達に過程にとって大切なポイントになります。したがって、児の急性期治療・ケアが過ぎた後は、先のA50のように児を観察・評価し、ポジショニングの必要性の有無、緩めるを判断します。[理学療法士 木原秀樹]

Q52:「側臥位、落ち着けない、タオル選択」</p> <p>腹臥位から側臥位などに移行する時に、児がバタついてしまい落ち着けないことがあり、自己鎮静を促すためにおくるみをすることがあります。バスタオルだと大きくうまくいかず、フェイスタオルだと下肢の屈曲位が保てない状態です。タオルの選択のポイントやおくるみを取り入れるポイントなどあれば知りたいです。
A52:「不安定、体位、併用」

各体位の中で腹臥位は、児が最も落ち着きやすい体位です。側臥位は腹臥位に比べ、マットなどの接地面が小さくなり、児にとって不安定な体位です。そのため、腹臥位から側臥位などへ移行直後は、落ち着きにくい児は多いです。その場合、ロールタオルとタオルでのおくるみを併用します。ロールタオルで、側臥位での保持を安定させるため、後頭部・背中・臀部をしっかりと支えます(L字型)。体位の保持にはロールタオルの高さとロールタオル自体がずれないことが必須です。落ち着かせるために、バスタオルを用いる場合、半分に折るなど大きさを調整し、児を包み込み、その周りをロールタオルで囲みます。フェイスタオルを用いる場合、児の腹部側、臀部側、背中側をロールタオルで囲み(U字型)、児の上から(毛布のように)包み込むようにフェイスタオルをかけます。[理学療法士 木原秀樹]

Q53:「早産児・低出生体重児、正中位、方法」</p> <p>早産児・低出生体重児のポジショニングを行う際に正中位が保てないことがあります。良い方法を教えてください。
A53:「各体位、頭部と体幹、軸の捩じれ」

各体位(背臥位・側臥位・腹臥位)では、正中位を保ちやすい体位、保ちにくい体位があります。側臥位は、頭部と体幹の軸の捩じれが生じないため、他体位に比べ正中位を保ちやすいです。背臥位では、赤ちゃんの後頭部が大きく、頭部が安定しないため、顔が左右どちらかに向きやすくなります。特に人工呼吸器管理やケア者のアプローチ側の関係で右側を向きやすくなります。その場合、首の隙間を埋める大きさでフェイスタオルなどを用いロールタオルを作り、首を支えることで、頭部を真っすぐ保持しやすくなります。腹臥位では、児の顔を左右どちらかに向ける必要があります。頭部と体幹の軸の捩じれが生じ、そのような姿勢が継続する場合、新生児にはその捩じれを戻そうとする立ち直り反応があるため、顔が向いている側に体幹の腹部側を向けようと、後頭部側に体幹が倒れていく現象が多くみられます。腹臥位では、頭部と体幹の軸の捩じれは生じ、正中位は保てないため、体幹が倒れないように、後頭部側の体幹をポジショニング用具でしっかり支えることで、児の安定・安心が継続します。[理学療法士 木原秀樹]

Q54:「足、外旋や内反、予防」</p> <p>足の外旋や内反を予防するためのクッションなどの入れ方を教えてください。
A54:「足部、荷重、軽減」

以前は、入院児の足の外旋や内反傾向を改善または予防するために、足背にガーゼなどで作成した細いロール(クッション)を置き、足部を中間位に保つことをお薦めしていましたが、児の動きによりロールがずれる・外れやすく、有効性が低いため現在はお薦めしていません。足の外旋や内反傾向が悪化しやすい体位は腹臥位になります。腹臥位での抱き枕が低い場合、足部に荷重がかかり外旋または内反が悪化しやすくなります。また、抱き枕が胸部のみ支えるタイプの場合、重力によって下半身が徐々につぶれ、足部への荷重が大きくなり、外旋や内反はより悪化しやすくなります。抱き枕を高くし、胸部から股関節付近までの長さの抱き枕を用いることで、足部への荷重は軽減され、足の外旋や内反の悪化の予防ができます。腹満により、胸部のみ支えるタイプの抱き枕しか用いることができず、それにより下半身がつぶれ足部に荷重がかかりやすい場合は、側臥位を優先したポジショニングを導入します。[理学療法士 木原秀樹]

Q55:「下肢、内反、看護師」</p> <p>出生時より下肢が内反している児がいました。リハビリが介入するまでの期間に看護師で行うと良いことがあれば教えてください。
A55:「両足底、中間位、体操」

胎内の姿勢や先天性疾患により、出生時から内反足を認める児がいます。ポジショニングにおいて、先のA54のような対応をすることは有用です。背臥位保持では、ロールタオルを高くし、両足底をロール面に接地させることで、足部を中間位に保ちやすくなります。また、リハビリが介入するまでの期間、足部が内反のまま硬くならないように体操を行います。ケア者が片手で児の足首を持ち、他手で足背と足底を挟むように持ち、足趾を上下に向けるように(背屈・底屈)、
交互にゆっくりと5-10秒間ずつ×10回程度で動かします。軽度の内反足は退院後、立位・歩行経験を重ねると修正されやすいですが、足の外旋は、立位・歩行経験を重ねると外反扁平足に変わり、ペタペタ歩きで修正されにくい傾向があります。[理学療法士 木原秀樹]