発達ケア

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■発達ケア■ 


□ケア・アセスメント

Q1:「自己鎮静行動、吸綴」

新生児では、自分の顔や身体を触ったり、身体を丸めるなどの自己鎮静行動(自己制御行動)を認め、その行動には吸綴も含まれています。昔から赤ちゃんは、「(生得的に)吸啜欲求がある」、だから、その吸啜欲求が満たされると落ち着く、と教科書などに明記されてきました。吸啜の根源に関することだと思いますが、「何故、吸啜が自己鎮静になるのか?」、考えを教えてもらえますでしょうか?

A1:「触覚、口腔、発達」

触覚は自己鎮静に強い影響を与えます。触覚の中でも圧が高い触覚は一番落ち着きをもたらします(例:抱っこ・抱きしめる)。ヒト(胎児)の触覚で一番最初に発達し始めるのは口腔周囲(口腔内も)、次に手掌になります。つまり、ヒト(胎児)の胎内での手(指)しゃぶりは早期から認め、圧の高い触刺激(触圧覚刺激)として、早期から自己鎮静経験を学習しています。自己抱っこに近い感覚を、口腔内の触圧覚刺激で得ている感覚です。吸啜のリズムは、延髄でのCentral Pattern Generator(CPG)の発生源で生成されていると言われています。このCPGは無意識にパターン化している歩行と同じ原理で、ヒトの動作のリズムを作り出す源です。胎児が母親の心臓の鼓動を胎内で聞くことで落ち着くように、一定のリズムの発生は落ち着きをもらたします。「触圧覚刺激 + 一定リズム=吸啜」は、自己鎮静において強い影響を与えると考えます。

 

□ポジショニング

Q1:「退院前、ポジショニング」

退院前の赤ちゃんのポジショニングを必要最低限にするためにバスタオルでの「おくるみ」程度にしたいのですが、体温が上がってしまうためあまり行わないでほしいと思うスタッフもいます。退院前のおくるみのメリットはどういった事が挙げられますか?

A1:「退院後、育児予測」

退院前の場合、おくるみなどのポジショニングが必要とされる場合は、①落ち着きがない、②筋緊張が低い、③反り返りやすいなどがあります。バスタオルであれば、退院前の時期はそれほど体温上昇はみられませんが、ポジショニングは必須で(ポジショニングしないと、退院後はかえって育児に苦労されるだろうと予測される)、体温が上昇する場合はクーリングも併用になると思います。退院前は、基本的に自宅環境に近づけますので、バスタオルを掛けるなどで留まり、特別なポジショニングは必要ないことが多いです。①落ち着きがない場合は、自己鎮静を促すためにおくるみをします。②筋緊張が低い場合は、四肢体幹の屈曲・内転位を強めにした姿勢をとるためにおくるみをします。③反り返りやすい場合は、自己鎮静を促す、反り返り軽減のためのおくるみをします。いずれも似たような姿勢になるかと思いますが、①筋緊張が低い場合は手が口元に近づくような姿勢、②筋緊張が低い場合は四肢の内転位を強調した姿勢、③反り返りやすい場合は頸部または股関節伸展を押さえるような姿勢などが特徴的かと思います。

 

Q2:「移行期、腹臥位」

急性期が過ぎ移行期での腹臥位のポジショニングに際して、胸クッションの有無、囲い込みの程度、腹臥位の頻度などについて悩む事が多いです。屈曲姿勢を保つことができていれば、児の様子を見て良いとの文献もありますが、少しでも腹臥位の姿勢が崩れる事に対して不安があるスタッフも多く、どうしても腹臥位の頻度が少なくなる事が多いです。腹臥位を多くとった児のほうが四つ這いや立ち上がりが早くなったとの研究もあり、できる限りに腹臥位もとらせてあげたいと思うのですが、どの程度の姿勢の崩れであれば許容して様子を見ていても良いのでしょうか?

A2:「万遍なく体位変換、姿勢・動きの許容範囲」

ポジショニングでは、治療・ケアの妨げにならない範囲で、背臥位・側臥位・腹臥位を万遍なくとっていただくことが良いです。ご質問内にありますように、それぞれの体位で獲得できる発達が違います。腹臥位での姿勢の崩れに対して許容できる範囲は、①姿勢が崩れても再び自ら屈曲位に戻れる、②姿勢が崩れた後、屈曲位に十分戻れなくても、四肢・体幹の捻じれがなく赤ちゃんは安静を保てているになるかと思います。このような児であれば、姿勢固定を優先するより、ある程度動きも許容したほうが、発達的にも良いかと思います。わかりやすいのは腹臥位の姿勢が崩れた後、バイタルが安定しないような場合は、腹臥位姿勢を整え直しますし、その際には胸クッションを入れます。

 

Q3:「腹臥位、側臥位への移行」

新生児集中治療室(NICU)で全身状態が安定した赤ちゃんに対し、腹臥位から側臥位への移行時期はいつごろが良いでしょうか?現在は体重が1500gを超える、もしくは修正32週以上で側臥位へ以降しています。

A3:「早期でも可、側臥位での発達」

多くの病院では、NICU入院直後は背臥位管理、脳室内出血リスクが低下し皮膚状態が安定してくる3~7日以降は、呼吸状態が有利となる腹臥位管理というパターンをとっていると思います。早ければ、背臥位から腹臥位に体位を変える(または背臥位、腹臥位での体位変換管理)時期に側臥位も導入する病院があります。腹臥位ではポジショニングにより胎児姿勢保持を保持しにくい赤ちゃんもおり、その場合は側臥位のほうが胎児姿勢を保持しやすいこともあります。側臥位は赤ちゃんの対象姿勢を保持しやすいため、背中をしっかりと支持できれば、抱き枕をしたポジショニングで安定した姿勢がとることもできます。各病院で体位変換(各体位の導入時期)に決まりがあり、あまり統一した見解はありませんが、修正32週以降に多い挿管による人工呼吸器離脱後(抜管後もしくは自立呼吸機能向上)の側臥位は発達を促す(正中位発達・手と手を合わせるなど)ためにも重要です。背臥位、腹臥位でのポジショニングに困難を感じる赤ちゃんの場合は、人工呼吸管理時からでも側臥位を導入する選択はあると思います。

 

Q4:「反り返り、良姿勢保持」

網膜症の新生児で中枢症状(下肢クローヌスの出現など)が生じている赤ちゃんが新生児病棟に入院しています。後弓反張ではないのですが、ストレス時に身体がのけぞり反り返ります。また哺乳時も同様の反り返りが見られ、うまく哺乳が出来ずかなり時間がかかります。バスタオルで屈曲位に包むなど、ポジショニングは実施しているのですが、覚醒状態(state)が上がるにつれ、良姿勢保持に難渋します。一概には言えないと思いますが、何か良い介入方法などがありますのでしょうか?

A4:「抱っこ、ベッドでの再現、反り返り要因」

症候群(先天異常系)であればまだ疾患名がついていないでしょうか。常に全身が緊張し、哺乳時など口腔も含めた全身の過敏性と思われます。一番してあげたい介入は抱っこになります。保育士さんが常勤でいらっしゃる場合は、抱っこを多めにしてあげられるのですが、そうでない場合は理学療法士、看護師などがかかわれる際は、抱っこをしてあげる、それだけでも赤ちゃんが楽になる時間ができると思います。理学療法士はどの抱っこ(屈曲位、縦抱き、横抱きなど)がその児が楽になるかを評価します。下肢クローヌスが目立つような児の場合は、緊張の源になっている下肢で股関節や膝関節を90°以上屈曲位に保てると全身の緊張が落ちることがあります。抱っこ姿勢を10-20分でも続けて、その後ポジショニングをしなくてもベッド上で児がリラックスしていられれば(5分間でも)、その抱っこ姿勢は児にとってとても心地よくベッド上で再現すべきポジショニングということになります。また抱っこでのリラクゼーションが増えるとベッド上でリラックスした時間が自然と増えてくる児もいます。ベッド上で再現すべきポジショニングとして多くの場合、屈曲姿勢がそれにあたると思いますので、体位変換パターンを考慮しながら、パットやバスタオルなどでポジショニング方法を検討します。パットやバスタオルなどではポジショニング姿勢が保持できない場合はクッション椅子を作成します。また腹臥位も重力の手助けで屈曲位を保持し楽になりやすい体位です。この赤ちゃんはおそらくポジショニングだけで24時間365日の筋緊張はコントロールが難しいかもしれません。月日が経ち体が大きくなるにつれて、それはより強調され、コントロールが難しくなってくるかもしれません。ポジショニングは万能ではないと割り切り弛緩薬について医師と相談することも必要になってくるかと思います。下肢クローヌスがありまますので下肢を含めた四肢・体幹の関節可動域練習、過敏性を軽減するための抱っこ中もしくはベッド上でのタッチケア(触覚での快刺激入力)も必須かと思われます。補足になりますが、網膜症で目がどれだけ見えているのか、見えていないのかですが、目が見えない児は精神的なことで緊張しやすくなります。声かけや音楽なども精神的な緊張を落とすきっかけになります。また緊張しやすい要因に呼吸が苦しい、消化が苦しいなどないかも確認してみてください。

 

Q5:「SATOカーム、ベビーピロー、股関節が広がる」

NICUのポジショニンググッズで日本光電のSATOカームを使用しています。腹臥位での抱き枕(ベビーピロー)は、体重別に使用しています。ベビーピローの基準として1200~1800gなどがありますが、赤ちゃんの体重が1078gの場合、ベビーピローは800~1200gの仕様になります。日齢が経過し、体動が活発になっていくと1200g以下のピローでは、腹臥位で股関節も広がりつぶれやすくなってしまいます。このような状態をどのようにアセスメントし、ベビーピローを変更すれば良いでしょうか?

A5:「股関節が広がる原因、用具基準の考え方」

腹臥位のポジショニングで股関節が広がる(股関節外転位)原因として、①下肢を屈曲し膝が真下に向いた状態(股関節中間位)で体幹(腹部)から保育器マットまでの高さより抱き枕の高さのほうが低い、②膝に体重がかかり過ぎる、③下半身(体幹・下肢)の筋緊張が低いなどがあげれらます。①の場合は、体重別で1つ上基準のベビーピローを使用するか、現ベビーピローにタオルやスポンジで高さを補います。②の場合は、上体拳上位をやや低くする、ベビーピローの頭部側の高さを少し低くするなどで、頭部側に体重を移します。③の場合は、抱き枕で腹部・骨盤上部まで支えます。日々の成長で体動が活発になってくると、体重1000g前後の赤ちゃんはまだ筋緊張が低めであるため、下肢は広がりやすくなります。ベビーカドルで児の体重を(膝でなく)殿部で支える、下肢が外転しくいように児の両側から支えるなどの対応も大切です。児の下半身の体重が一番どこにかかっているか触れながら確認してみてください。下肢が広がりやすい児の多くの場合が膝に体重がかかっています。骨盤が後傾し(背中が丸くなり)、殿部(特に尾骨周辺)で児の体重が支えられていると、体動があっても姿勢が崩れにくくなります。どのポジショニング用具でもいえますが、メーカーが推奨する体重別の用具は1つの用具内でも幅大きいため、用具を使用して児の姿勢保持・自発運動の両立がうまくいかない場合は、原則、児より大きな基準の用具を使用するより、1つ下基準の用具を使用し、タオルやスポンジで高さ・長さ・幅を補うほうが最適な用具の使用になります。

 

Q6:「体位交換、体位変換」

「体位交換」と「体位変換」はどちらの用語が正しいのでしょうか?

A6:「体位の意味、変換

「体位交換」と「体位変換」はどちらの用語も正しい用語です。以前は「体位交換」が多く使われていました。姿勢は「体位」と「構え」から成り立っています。「体位」とは「体の向き」の意味です。「構え」とは、「手足体の位置」の意味です。「体位=体の向き」は「交換する」より「変換する」ほうが意味的には通じやすいと考えています。余談ですが、ポジショニングは姿勢管理ですので、体位を考慮することも含まれます。

 

Q7:「座位保持椅子、作製方法」

新生児病棟での入院が長くなっている赤ちゃんの発達のために座位保持椅子があればと思っており、どのように作製すればよいか悩んでいます。GCUなどで使用できる座位保持椅子(クッションチェア様の椅子)の作製方法があれば教えてください。椅子を作製する際に素材がウレタンだと粉状に風化したりすることもありますでしょうか、またGCUなどに椅子を入れる際に消毒はどうすれば良いでしょうか?

A7:「作製マニュアル、使用方法」

赤ちゃんの座位保持椅子(含む腹臥位保持用具)の作製手順については メニューその他:王様の椅子・腹臥位マットの作り方(マニュアル) を参考にされてみてください。素材は市販されている座布団用スポンジです。数ヵ月経つと黄ばんできますが、粉状に風化することはありません。椅子自体は消毒できませんので、外部から新生児病棟への持ち込みが厳しい場合は、入室時にエタノール拭きします。使用時は椅子にハンドタオルなどを敷き、そこに赤ちゃんに座ってもらいます。ハンドタオルは汚れた場合や1週間程度で変えます。

 

Q8:「ポジショニングマット、光線療法、買い替え」

NICUでポジショニングマットを使用しています。光線療法を下から当てるとマットが安定しないのですが、光線療法の児には使用しない方がよいのでしょうか?洗濯の影響で1年くらいでマジックテープが粘着しなくなり、周囲をタオルで囲んだり、テープで補強していますが買い換えた方がよいのでしょうか?

A8:「ポジショニングマットの安定化、基準使用期間」

ポジショニングマットは医療用品ではないため、下側からの光線療法の使用テストなどは行っていませんが使用可です。光線療法の土台(マット)の部分が安定感がない場合は、ポジショニングマットも不安定になります。その場合は、ポジショニングマットの周辺を砂のうのようなおもりで押さえることで安定します。ポジショニングマットやマジックテープは、使用頻度、洗濯で使用する洗剤や強度、また殺菌の方法などで劣化の程度は変わってきます。基準使用期間は明確にはしてありませんが、各病院の使用状況を勘案すると、通常の耐久性は1年です。ただ、使用・洗濯程度によっては2-3年使われている病院も多いです。耐久年数に一番影響するのは洗濯方法になります。もし劣化が早いと感じられる場合は、折りたたんで洗濯ネットの使用による洗濯をお奨めしています。