リハビリテーション

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■リハビリテーション■


□NICU・GCU発達評価

Q1:「GMs評価、評価時期」

NICUに入院している・退院した赤ちゃんたちのGeneral Movement Assessment(GMs評価:自発運動評価)を導入したいと考えています。どのタイミングで評価するのが良いでしょうか?

A1:「Writhing・Fidgety movements、ビデオ記録」

GMs(赤ちゃんの運動)は全身を含む複雑で流暢な粗大運動です。GMsは胎児期からあり、時期によりPretermWrithing movements(在胎8週から修正46-49週)、Fidgety movements(修正46-49週から55-60週)が見られます。GMs評価は、それぞれのmovements期間内で評価すれば良いですが、その中でもGMsが出現しやすい時期、つまり評価しやすい時期があります。NICUに入院している時期は修正38週から42週、退院後は修正52週から56週あたりで最適なGMs評価ができると考えます。GMs評価ではビデオ記録も行い、多人数での評価をおすすめします。参考までに、管理人は研究の一貫として、修正33週から35週、修正36週から38週、修正52週前後でGMs評価を行っていました。文献的には、NICUに入院した早産児はPretermWrithing movementsは未熟性が強く見られる(ぎこちない動きが多い)、早期にFidgety movementsが出現しやすいと言われています。

 

Q2:「Dubowitz評価・新版K式発達検査、評価表自動計算」

当院では、新生児から学童期にかけての定量的な発達評価・検査を導入することを検討しています。評価・検査の中で、Dubowitz評価、新版K式発達検査などを行っていきたいと考えていますが、評価・検査後の結果の数値などを自動で計算できると、業務効率があがると考えています。EXCELを使った計算例を教えてください。

A2:「評価・検査後の結果、計算例」

評価・検査後の結果のEXCELを使った計算はいくつかのパターンでできます。計算例を示します。Dubowitz評価では、EXCELのSheet1でチェックボックス作成→Sheet2でチェックボックスをTRUE・FALSEで反映、そして、「IF関数の基礎」で点数化をします。新版K式発達検査では、「IF関数のネスト」を使用します。メニューその他:Dubowitz評価・新版K式発達検査(評価表計算例) を参考にされてみてください。

 

Q3:「満期産児・発達検査、疾患別リハビリテーション料」

低出生体重児や早産児以外の満期産児のような赤ちゃんに対する新生児発達評価は、疾患別リハビリテーション料の診療報酬の算定対象になりますでしょうか?また、満期産児の生後2-3ヶ月での発達評価をリハビリテーション部門で実施した場合、疾患別リハビリテーション料の算定はできますでしょうか?

A3:「診療報酬・発達及び知能検査」

疾患別リハビリテーション料のうち脳血管疾患等リハビリテーション料が小児疾患に対応している場合が多いですが、満期産児の新生児期・乳児早期での発達評価はリハビリテーション疾患名がつくことがほとんどないため、疾患別リハビリテーション料の算定対象になりません。そのため、一部の病院では心理系診療報酬の「発達及び知能検査」で報酬を算定しています。ただし、対象となる検査項目が決まっていますので、General Movement Assessment(GMs評価:自発運動評価)やNeonatal Behavioral Assessment Scale(NBAS:新生児行動評価)を実施した際は、簡便に評価できる遠城寺式乳幼児分析的発達検査も実施しておくと良いです。これらは「発達及び知能検査(操作が容易なもの)80点 になります。乳児早期でも新版K式発達検査は「発達及び知能検査(操作が複雑なもの)280点になります。 「発達及び知能検査」は新生児期・乳幼児期のいつでも算定可能です。なお、新生児期・乳児早期の診療報酬請求は各県によっても返戻応対が違います。

 

Q4:「脳室周囲白質軟化症、足部クローヌス」

軽度の脳室周囲白質軟化症(PVL)を認める修正40週頃の新生児の反射検査を行い、足部クローヌスを認めました。この足部クローヌスは反射の亢進で異常所見と考えて良いのでしょうか?

A4:「新生児、腱反射」

修正40週頃の新生児での反射検査では、検査者が上手に施行すると、どの児も足部クローヌスを認めます。PVLを認める児でも、この時期に他児と比較し、足部クローヌスが亢進しやすいことはありません。極低出生体重児が症例の研究になりますが、脳性麻痺リスク児の足部クローヌス(腱反射)が有意に亢進していたという結果ではありませんでした。

 


□NICU・GCUリハビリ

Q1:「入院中、リハビリ介入」

NICUに入院され、急性期を超え、哺乳なども自立し、退院まで四肢・体幹の運動の経過を診ることが中心になった赤ちゃん達は、入院中は発達評価や家族指導を含めて退院するまでリハビリでの介入したほうが良いでしょうか?成人患者、他の病棟全て回らなければならず、患者さんも多いので、一部のスタッフからは、元気な赤ちゃんは退院まで待たずにリハビリを終了しても良いのではと言われます。

A1:「発達評価、リハビリ対象」

NICUに入院した赤ちゃん達では1500g未満(または1000g未満)出生児、脳室周囲白質軟化症(PVL)・脳室内出血(IVH)児、長期人工呼吸管理児などが発達評価の対象になります。先天異常(13・18トリソミー、骨関節疾患など)を持つ赤ちゃんはリハビリ対象になります。発達評価の対象の赤ちゃんは、理学療法士などが発達評価を行った後に、入院中に発達支援(家族指導含む)を行うか行わないか判断し、発達支援が必要な場合は、改めて医師に相談しリハビリ再指示となります。入院中から発達支援を行う場合は、基本的に外来フォローも必要な場合が多いです。NICUを有する地域病院は多くの患者さんを診ていらっしゃいますので、障害が明確でない赤ちゃんに時間を割くのに疑問を持つスタッフが多いのも確かです。発達評価をして、この赤ちゃんはこの発達が遅れている(例:四肢の動きが単調、四肢・体幹の筋緊張が低いなど)の理由が明確であれば入院中から退院後も継続的なフォローが必要になります。ただ、フォロー理由が他スタッフに明確な回答ができない場合は、発達経過の観察のみで、綿密なフォローせず様子を見て良いと思います。赤ちゃんの発達評価の経験を積んでいくと、単純に、“発達いいなあ”、“発達遅れているなあ”、“発達遅れていて麻痺要素もあるなあ”、という感覚が出て来ます。是非、発達評価でフォロー判断ができる眼を身につけていってください。

 

Q2:「リハビリ、3職種介入」

当院のNICU/GCUでは稼働間もなく、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のリハビリ3職種が介入することになっています。リハビリの役割、職種間の役割分担、統合的なチームアプローチ、リハビリと病棟の連携などを模索中です。

A2:「リハビリの役割、役割分担」

リハビリの役割は、評価と介入プログラムの作成になります。発達・親子関係・哺乳など評価をし、病棟や親御さんが児にかかわる介入プログラムを作成します。リハビリ職種はより専門的な介入を行います。1-2週間ごとに再評価、介入プログラムを更新していきます。リハビリ3職種の役割分担は、理学療法士では運動発達評価(GMs評価、Dubowitz評価)・介入、作業療法士では知的・感覚発達評価(Brazelton評価)・介入、言語聴覚士では親子関係を含む対人関係・哺乳評価・介入になります。カルテ上やカンファレンスなどで3職種間、病棟での情報を共有し、統合した目標をたて、役割(3職種・医師・看護師など)に沿って支援を行います。

 

Q3:「発達障がい、理学療法士」

当院小児部門では、外来・入院ともに発達障がい児に対するリハビリテーションの充実を進めています。理学療法士が発達障がい児(自閉症など)に対してどのようなことができるとよいのかということに対して、壁にぶち当たっています(理学療法士としての評価や介入方法)。

A3:「新生児・乳児期、発達特性、スペシャリスト」

いわゆる広義の意味の発達障がいは、発達に対するリスクを有する状態を示しますので、脳性麻痺のような身体的な発達の障がいも含みますが、狭義の意味(通常はこちらを指します)の発達障がいは、自閉症スペクトラム(自閉症)や注意欠陥多動症のような発達の特異性を有す状態を示します。NICUに入院されるお子さんで障がいを有する場合の多くは、身体的な発達の障がいではなく、自閉症などの発達障がいです。そこにリハビリテーション科の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がチームで包括的に対応する場合、理学療法士の役割は、①新生児・乳児期の発達障害の早期発見・支援、また②幼児期の発達性協調運動障がいの改善になります。①については メニューその他:ハイリスク新生児の評価と介入(プレゼンテーション) を参考にされてみてください。プレゼンテーション資料の18・19頁に記載がありますが、将来、発達障がいを有する児の多くは、乳児期の運動発達の遅れが指標になることがわかってきています。調査結果をまとめてみると、発達障がいを有する児の乳児期の発達特性は将来、脳性麻痺になるお子さんと似ていますが、脳性麻痺のお子さんよりは運動発達の遅れは緩やかです。乳児期の発達で運動発達・精神発達の両発達とも遅れてきている場合は将来、精神遅滞(知的障がい)になるリスクが高いです。将来、発達障がいになるリスクが高い場合、新生児期からすでに発達の遅れが出てきている(自発運動、頭部コントロール、接触行動など)ことも今後明らかになってくると思います。②については 「発達障害の運動療法 ASD・ADHD・LDの障害構造とアプローチ(著者:新田 收先生、三輪書店)」が理学療法士にとって参考になります。発達性協調運動障がいの評価の仕方が詳細に記載されています。子ども達の将来の発達の偏りは、胎児期・新生児期からの自発運動や行動が根源となっているといわれています。新生児期からの理学療法介入の対象は、脳性麻痺以上に多くは発達障がいや知的障がいなどを対象としていることが多いです。理学療法士はどの職種よりも、新生児・乳児期の発達障がいのスペシャリストであることが1つの役割です。

 

Q4:「軟骨無形性症、抱っこ、頸椎カラー」

生後約45日の軟骨無形性症の赤ちゃんで、生後より頚椎の環軸亜脱臼を認め後方固定術を施行しました。今後退院を想定して、簡易的な頚椎カラー(あるいはその代わりになるもの)が必要と考えています。主に移動時やご両親を含むご家族が安心して抱っこできるように、装着する予定です。赤ちゃんの頚椎カラーとして自作する際に、どのような素材を使用されますか?また、何か良い方法がありますか?

A4:「スポンジ、ロール」

軟骨無形性症の赤ちゃんは、頭部が体に比べ相対的に大きいことや頸部短縮から頸椎カラーの作成が困難な場合が想定されます。この時期での抱っこや移動時には、頭部から上半身(もしくは全身)を大まかに模ったスポンジの上に乗せ、そのスポンジごと抱っこ・移動する方法が容易で安心です。スポンジの上にはタオルやシーツをかぶせ、その上に赤ちゃんを乗せます。スポンジの模りと頭部や上半身の隙間が少なければ、上体を45度程度まで起こすことも可能です。もし頸椎カラーを作成する場合は、”自遊自在”のような芯にタオルを巻いて、そのちくわ型のロールを首に巻く方法もあります。

 


□発達支援(乳幼児)

Q1:「発達の遅れ、座位保持」

1歳4ヶ月のお子さんが呼吸不全で入院してきました。寝返りと介助での座位保持が可能ですが、まだ首のぐらつきあり、発達はゆっくりです。自力での座位保持を促す方法として、膝の上、バンボ、授乳クッションの利用を考えていますが、どのように使い分けたらよいのでしょうか?

A1:「座位保持目標、3種の座位保持練習」

1歳4ヶ月での介助座位レベルになりますので、発達は4-6ヵ月レベル、発達指数約40程度になります。首のぐらつきもあり体幹の筋緊張・筋力の弱さがあります。そのような状況ですと、2歳までの自力上肢支持座位および自力椅子座位の獲得が目標になると思います。手を床についての支持座位と椅子などを使用した座位の獲得は別物として練習していきます。上肢支持座位の練習順は、いずれもあぐら座位で、①児の胸レベルの高さの台(授乳クッション可)に両肘をついて体幹やや前傾位での座位保持、②児の膝上に手をついての座位保持、③床に手をついての座位保持になります。椅子座位の練習順は、①クッションチェア座位、②授乳クッション座位、③バンボ座位、④座椅子座位また幼児椅子座位になります。1歳4ヶ月のお子さんですので、体の大きさ的にバンボは小さく、支持が少なく保持は大変かもしれません。また体幹の筋緊張・筋力の強化のために介助者の膝上で椅子様座位をとり体幹下部または腰を支持し、体幹垂直位を保つ練習を並行して行っていきます。頸部と体幹の垂直位での保持にぐらつきがみられなくなったら、体幹を前後左右に少しずつ傾け、頸部と体幹の立ち直り反応を促していきます。重度の発達遅滞になりますので、原疾患の精査は必要と思われます。

 

Q2:「急性期病院、発達評価」

①当院は急性期病院で小児がん拠点病院でもあるので、長期の治療が必要な子どもの発達支援にかかわることがあります。また、重症心身障がい児の急性病変による入院時の介入、先天性疾患を有する児のリハビリもあります。そのような子ども達の発達評価と介入をどう考えれば良いでしょうか?②発達評価ツールを使いこなせていないのですが、どうすれば良いでしょうか?

A2:「評価結果の判断、運動と精神発達の関係」

①急性期病院では、リハビリに直接かかわりのないお子さんでも、発達リスクがある児は多いと思います。マンパワーの問題があるので、そのすべてのお子さんにかかわることができないと思います。NICU・GCUに入院した赤ちゃんもそうですが、そのお子さんにいますぐ介入した方が良いのか、数ヵ月ごとの定期評価で経過をみるのか、しばらく介入は必要ないのか、それを判断することが一番大切になります。それを判断する役割は理学療法士・作業療法士になると思います(その後の決定・処方は医師になりますが)。②発達評価ツールは、運動発達のみ評価するものでなく、精神発達も評価できるものを使用します。発達遅滞・発達障害グレーゾーンのお子さんたちの予後を予測するには精神発達の状況も知る必要があります。簡単に分けると、乳児期の運動発達の遅れ+精神発達の遅れ=発達遅滞リスク、乳児期の運動発達の遅れのみ=神経筋疾患や発達障害リスク、幼児期の精神発達の遅れのみ=発達遅滞・発達障害リスクになり、乳児期の精神発達の遅れのみというパターンはあまりないです。運動発達も精神発達も評価でき、よく用いられているツールは遠城寺式・乳幼児分析的発達検査、新版K式発達検査になります。まず発達評価を行ってから介入をどうするか考える感じになりますが、ツールを使う発達評価は時間がかかりますので、自分なりの発達評価をして発達指数(発達年齢/生活年齢*100)の目安が出すことができれば良いと思います。

 

Q3:「発達、プログラミング、介入の意味」

発達が生得的にある程度プログラミングされているのであれば、リハビリ介入の意味はどの程度あると考えますか?

A3:「発達伸び期を感知、家族支援」

発達はプログラミングされている生得的なものと生活環境に影響されているものが半々だと言われています。病院を受診されるお子さんでは、例えば、がん治療のお子さんの場合(神経原性でない場合)は生活環境に発達が影響されますのでリハビリでの発達促進は有効です。重症心身障がいや先天異常のお子さんの場合は生得的な影響が非常に大きくなるため、リハビリでの発達促進は思うような結果が得られないことが多くあります。ただ、どの疾患・障がいを持つお子さんにも、発達伸び期というものが必ず定期的にやってきます。それは数ヵ月に1度ずつのパターンが多いのですが、その発達伸び期にリハビリ介入(家庭での介入も含む)すると、確実にリハビリ効果があったといえるような結果が得られることがあります。その発達伸び期を感知できる評価が出来るようになることが大切です。リハビリ介入は家族の不安解消(もしくは寄り添う)にも大きな役割があります。

 

Q4:「家族指導、グレーゾーン発達」

①家族指導で必要最低限かつ効果が出そうなホームプログラムの実施頻度と内容に目安はあるでしょうか?②障がいを持つお子さんのリハビリ介入と比較し、グレーゾーン発達の児のリハビリ介入の意味はどこにあるでしょうか?

A4:「ホームプログラム、発達評価、介入の判断」

①家族指導での家庭での介入(ホームプログラム)の実施頻度や内容は家庭の状況に応じて検討します。保護者の理解度、兄弟の有無や手のかかり方、祖父母の家事や育児のかかわり状況などを詳細に把握し、ホームプログラムを決定します。有効と考えるホームプログラムは1日5-10分のかかわりを毎日実施と考えます(時間に余裕がある家庭の場合は午前午後で2セット)。そのため、実施してもらうプログラムは1-3つ程度になります。病院外来は2週に1度の頻度で、外来時に評価→ホームプログラム検討→家族指導の流れで介入します。病院外来が1ヶ月に1度の頻度の場合は、家庭での発達状況が変化する可能性が高いため、ホームプログラムは2段階(レベルアップパターン)で指導します。また、日常でできる姿勢保持や運動(遊びでの環境や遊具の選択)も家族に含めて指導します。②大学病院や総合病院ではグレーゾーン発達のお子さんが多いと思います。そのお子さんにいますぐ介入した方が良いのか、数ヵ月ごとの定期評価で経過をみるのか、しばらく介入は必要ないのか、それを判断することが理学療法士・作業療法士の大切な役割になります。またグレーゾーンで不安になられている保護者への理解を深める介入の役割もあると考えています。

 

Q5:「発達を促す関わり、大切なこと」

乳児期の発達を促す関わりで大切なことを教えてください。

A5:「発達の芽、発達のつながり」

評価により促したい発達の具体的なイメージを持ちます。その発達のイメージは細かければ細かいほど良いです。例えば、1つの発達課題を獲得するまでには、いくつもの発達段階を踏んでいますし、その発達段階の最初は半年以上前から出現しています。それを自分は“発達の芽”と呼んでいます。例えば、手のおしゃぶりの発達段階は、①自発運動が増える→②自発運動での肘関節の回旋を含む屈伸が増える→③自発運動での手の顔への接触が見られる→④腹臥位や側臥位で手(手背側把握位)が口に触れるとしゃぶろうとする→⑤口唇周辺に刺激(スタイ、寝具、おしゃぶりなど)が入ると手を持っていき押さえようとする→⑥手掌側把握位で押さえようとする→⑦手掌側で時々手指を伸展して押さえようとする→⑧腹臥位や側臥位のような手を口に持っていきやすい姿勢で意図的に手を吸おうとする→⑨仰臥位で顔の向いた方の手を意図的に口に持っていく→⑩手と手の接触遊びが増えてくる(手と手が合うと母指側が顔側に有ることが多くなる)→⑪手と手の接触遊び中に両手が口元に触れることが多くなる→⑫頭部正中位での手のおしゃぶりが増えてくる→⑫頭部正中位での母指側でのおしゃぶりが増えてくる・・・→続きで、手をじっと見つめることが多くなると手を認識し、リーチが半月後くらいから始まる・・・や、手のおしゃぶりが増えると手指の分離がより増し、物の把握とリリースが上手になるなど、すべての発達がつながっています。ちなみに首の座り(頭部保持)の発達の芽は胎児期の自発運動での頸部の屈伸回旋からになります。早産の赤ちゃんは頸部の筋力が弱いことが多いのですが(全身の筋力に言えることですが)、胎児期に行う運動経験や接触経験が乏しいからです。このような発達のつながりを簡素化して示したのが“赤ちゃんの発達地図”の書籍になります。野球のすぶりの教え方はその選手に合った方法で教えていきます。選手が100人居れば練習方法も100通り以上あります。大げさにはなりますが、促したい発達の芽や各発達段階の反応が見られるまで、100通りの方法を考えます。それでも反応が悪い場合は、促したい発達の段階を1つ前に戻します。

 

Q6:「発達を促す関わり、家族が関わるタイミング」

乳児期の発達を促す関わりで、家族が関わるタイミングに教えてください。

A6:「発達のバランス・発達の反応性」

発達は運動、精神、言語社会から成り立っています。赤ちゃんのうちは運動面が目立ちますが、精神発達、言語発達も見られます。運動、精神、言語社会の発達は平等に評価し、支援することが大切です。各発達課題には反応性の良い時期があり(関わっているとわかりますが)、反応性の良い発達課題は自主トレとして家族に行ってもらえると発達の伸びが目に見えてよくなります。反応性の悪い発達課題も刺激を入れて少しでも反応があれば、それを積み上げるために家族に行ってもらう価値はありますが、家族のストレスが溜まるのであまりお勧めはしません。

 

Q7:「扁平足、ハイカットシューズ」

歩行後の乳幼児の立位・歩行で、指先に力が入りやすい状態での評価、扁平足を認めた場合はその扁平足はいつまで継続するのかなど、足部の評価がむずかしいと感じています。また、ハイカットシューズを処方する場合もどのタイミングで進めれば良いのか、そのような児にどのような運動支援を行えば良いかも悩んでいます。何かポイントがあれば教えていただきたいです。

A7:「扁平足の運動支援、ハイカットシューズ処方基準」

運動発達の遅れが見れらるお子さんの場合、大抵は全身の筋緊張が低下しています。そのため、立位の発達が進むと扁平足が目立つようになってきます。扁平足が継続すると、足底の内側、特に母趾の付け根に体重がかかりやすくなるため、母趾に力が入り母趾屈曲位となる児が見られます。ただ、児の体重が増加してくると足部で体重が支えきれなくなり、母趾は外反してきます(外反母趾)。基本的に扁平足は一生続きます。扁平足を治すのは困難ですから、ハイカットシューズを処方する主な基準は、①立位保持の時に足部が前面接地せず、足部の外側の一部が地面から離れているような重度な扁平、②歩行時につまづきやすい・転倒しやすいの2点になります。ですので、これらの改善がみられるまでハイカットシューズを更新します。ハイカットシューズにより、足部の一部不接地は改善していきますが、短くて1年、長ければ5-6年はかかります。平均2-3年です。扁平足の児への支援は、支援者の意図が通じる幼児以降であれば、足趾を使う運動で足底筋を鍛えることができ、いわゆる土踏まずが形成されてきます。乳児の場合は支援者の意図が通じにくいので、下肢内転で歩く場面やつま先立ちになる場面を設定します。下肢が外転すると足底の内側に体重がかかりやすくなり扁平足が助長されます。逆に下肢が内転すると足底の外側に体重がかかりやすくなり、足部が外反傾向となり土踏まずが盛り上がります。またつま先立ちでも足底筋が働きやすくなります。幅30cm程度の低いブロックの上を下肢内転傾向で歩く、壁に貼った上部のマグネットをつま先立ちでとるなどの場面設定が有効です。体重をかけなければ土踏まずを認めるけど、立位で足底に体重がかかると土踏まずがつぶれるという児は多く見られます。そのような児は土踏まずが形成される可能性がありますので、かえってハイカットシューズで固定せず、普通の靴で足底を使うような環境を設定することが有効です。

 

Q8:「運動発達の遅れ、歩行後フォロー」

運動発達の遅れで理学療法介入するお子さんが多いですが、歩行を獲得した児のフォローはいつまで行えば良いでしょうか?このような児は運動だけの問題なのか、他に問題があるのか、見きわめが難しいと感じています。

A8:「精神発達遅滞、発達障害リスク、フォロー終了目安」

運動発達が遅れているお子さんは、精神発達も同じレベルで遅れている場合と運動発達だけが遅れている場合があります。精神発達も同じレベルで遅れている場合は、いわゆる精神運動発達遅滞になります。運動発達だけが遅れている場合は、いわゆる発達障害の予兆(リスク)のもの、低緊張によるものがあります。精神運動発達遅滞は新版K式発達検査などの包括的な発達検査を実施し、精神・運動とも発達レベルを確認します。発達障害のリスクでは、発語や対人関係などの発達障害に特有な発達・行動を親御さんからの聞き取りや観察で確認します。低緊張によるものは、神経筋疾患などの病的なリスクを検討し、そうでない場合は、家族性(家族も低緊張で小さい頃歩き出しが遅かった方が多い)もよくありますので、家族に確認します。精神発達遅滞や発達障害リスクの場合は作業療法や言語療法に移行しますが、低緊張の場合は、手すりを使用した階段昇降が安定、小走りができる、ボールを蹴ることができるなど片脚支持性の向上、下肢筋力の向上の足掛かりが見えたときに理学療法を一度終了にします。ただ家族には定期的な医師診察を促し、いつでも理学療法に相談できるようにつなげておきます。

 


□リハビリ評価

Q1:「GMFM、ライセンス、対象年齢、フォーマット」

GMFMの評価を臨床で用いるために、日本語版テキスト(監訳:近藤和泉先生、医学書院)を参考にしています。①使用にあたってライセンスは必要でしょうか(評価用紙の購入の必要性など)?、②対象年齢は何歳~何歳まででしょうか?、③評価結果のデータ入力用のフォーマットはあるのでしょうか?

A2:「CanChild、スコア、Item MAP」

①日本における粗大運動能力尺度(Gross Motor Function Measure:GMFM)のライセンスは特にありません。リハビリテーションのための子どもの能力低下評価法(PEDI)は評価用紙が販売(医歯薬出版)されており購入が望ましいのですが、GMFMは評価用紙の販売がありません。CanChild(https://www.canchild.ca/)のサイトで「GMFM-88&66 Scoresheet」を検索すると英語版の評価シートが表示されダウンロードできます。②対象年齢はありません。GMFMは5 歳児が遂行可能な運動課題88項目で構成されています。ですので、一般的には5歳児のGMFMの運動課題の達成度(スコア:Score)は100になりますが、脳性麻痺を有する子どもは学童期でも100に達しない場合があります。③GMFMの評価結果を入力するGMFMというSoftwareはなく、GMAE(Gross Motor Ability Estimator=GMFM-66)というSoftwareがデータ入力用のフォーマットになります。CanChildのサイトで「GMAE」を検索するとダウンロード画面が表示されます。 Softwareに評価結果を入力すると、Item Mapというものが表示されます。このMAPは運動課題項目を番号順に並べたMAPと達成難易度順に並べたMAPの2種類があります。達成難易度順に並べたMAPが臨床上有効で、MAPにGMFM-66 Scoreというラインが引かれますので、そのScoreラインより左側にある赤丸がついていない運動課題は、本来であれば達成できる課題、Scoreラインよりすぐ右側にある赤丸がついていない項目が、少し頑張れば達成できる課題という見方をします。Item MAPを使用すると、運動課題の目標が立てやすく、本人や保護者への説明がしやすくなります。メニューその他:ハイリスク新生児の評価と介入(プレゼンテーション) の20頁を参考にされてみてください。

 


□先天異常

Q1:「レット症候群、歩行獲得」

レット症候群で手もみが盛んな1歳のお子さんを担当することになりました。レット症候群のお子さんは歩行を獲得しますか?走ることはできるようになりますか?退行はいつから始まりますか?歩けなくなることはありますか?

A1:「発達、リハビリ」

レット症候群は、乳児期に発症し、睡眠・筋緊張・姿勢の異常、知的障害などが顕著に出現してきます。運動発達は座位から遅れが目立ち始め、独歩も遅れます。独歩は獲得できる児が多いです。その時期は個人差が大きく、知的障害の程度にも関係してきます。基本的に知的障害は重度になりやすいです。レット症候群ではありませんが、5歳で独歩獲得した児もいますので、その程度の最大経過をみる必要もあるかと思います。一度歩行を獲得すると退行は老化に伴う要因のほうが大きいと思います。個人差はありますが、走行は困難で、手を引いてあげれば小走り程度できる感じになります。理学療法としては手もみを中心とした常同行動による肩を含めた上肢の関節可動域の維持・改善、常同行動および筋緊張異常による側弯(主に猫背)の予防が大切になります。作業療法としては常同行動以外の手の機能の獲得になりますが、重度の知的障害を伴うことも影響し、長期支援が必要になります。他の手の機能を獲得する前に退行していく可能性も高いです。嚥下機能は成人まで維持されると思いますが、頸部・肩周囲の筋緊張異常による嚥下障害も気に掛ける範疇になります。

 


□重症心身障害・医療的ケア

Q1:「医療的ケア児、理学療法士、役割」

今後も増え続けていくだろうと思われる「医療的ケア児」に対して、理学療法士の役割また何を求められているか教えていただきたいです。

A1:「超重症心身障害、呼吸器系障害、健康維持、介護負担軽減」

「医療的ケア児」は大きく分けて2つのタイプのお子さんがいます。1つのタイプは「超重症心身障害」、もう1つのタイプは「呼吸器系障害」になります。「超重症心身障害」の児における理学療法士の在宅支援での主な役割は、健康維持、介護負担軽減になります。健康維持では、人工呼吸や気管切開管理が必要なお子さんの肺炎や誤嚥予防のために在宅で継続できる呼吸理学療法やポジショニングを導入します。また心負荷増加や消化器系障害を起こさないための身体の変形・拘縮にも細心の注意を払い、ご家族へのポジショニング導入支援や関節可動域練習を行っていきます。介護負担軽減では、家族にとって一番負担となっている入浴・更衣・移動の負担軽減のための環境整備、身体の変形・拘縮予防、姿勢保持維持・向上で介入します。健康維持、介護負担軽減ともに、とれない姿勢(背臥位・側臥位・腹臥位・座位など)を作らないことが大事なことです。「呼吸器系障害」の児の発達はそれなりに良いものの気管切開管理で吸引が必要な場合が多いです。理学療法士の在宅支援での主な役割は、「超重症心身障害」と同様で肺炎や誤嚥予防のために在宅で継続できる呼吸理学療法を導入します。このタイプの児は吸引の医療的ケアがあり幼稚園や保育園になかなか入園できないという課題があります。「呼吸器系障害」の児は知的障害や発達障害を持つ児も少なからずいますので、地域の理解があり幼稚園や保育園に入園できても、友達と馴染めない、集団で遊べないことが目立ってきます。また発達性協調運動障害を認めることがありますので、理学療法士は協調運動の介入などの役割があります。

 

Q2:「側弯、手術、プレーリー」

3歳で脳症を発症した15歳の重症心身障害のお子さんで、コブ角背臥位60度、座位90度の脊柱側弯症があり、半年後に手術予定です。脊柱手術に向けて、頸部・体幹筋の筋力を向上させるために、理学療法では、姿勢を矯正しながら座位練習などを行っています。座位練習ではプレーリーを装着したほうが良いでしょうか?また側弯症の手術目的や必要な支援・プログラムについて教えてください。

A2:「側弯の原因、手術の目的、動的脊柱装具」

脊柱側弯症のお子さんの脊柱手術はリスクが高いため、そう多くはされていません。このお子さんが手術を行う理由が理学療法のプログラムにつながります。手術を行う理由として、痛みが発生している、内蔵(肺、心臓、消化器)を圧迫し機能不全を起こしている、介護負担(移動、着替え、入浴)が大きくなっているなどがあげられます。手術の内容としてある程度の矯正固定術になるかと思います。手術を行ういずれの理由にしても、手術後の側弯の再悪化を防ぐためにも、側弯が悪化してきた原因を考えて、理学療法を行う必要があります。側弯の主な原因は背臥位時の両下肢の膝の倒れによる骨盤・体幹の捻じれです。その場合は、膝が倒れた方向を凹としたCカーブの側弯になります。膝が倒れた方向と反対側に顔面が向く頸部回旋がともなう場合はSカーブの側弯になります。ですので、側弯の再悪化防止には体幹筋力向とともに、頸部の回旋や膝の倒れ・骨盤回旋の矯正が重要になります。側弯の再悪化を予防するポジショニングの再検討も大切です。ちなみに頸部・体幹筋の筋力を向上させるための上体拳上位や座位保持は、重力による更なる側弯悪化が目立つようになりますので、体幹装具(動的脊柱装具:プレーリーくん)を装着したほうが良いです。頸部・骨盤回旋の矯正やポジショニング以外に、手術を行う理由となっていることに対応します。特に側弯により病的状態に陥りやすい肺(肺炎や無気肺が発生しやすい)に対しては呼吸理学療法も併用し、肺疾患の改善や予防に努めます。

 


□呼吸理学療法

Q1:「繊毛機能不全、呼吸管理」

線毛機能不全症のお子さん(小学3年生)の外来での呼吸指導の依頼を受けました。喀痰不全とレントゲン上で一部浸潤影を認めます。段差昇降にてSpO2低下を認め、聴診上含気の乏しさがあります。深呼吸およびハフィング指導を行いました。今後、どのように呼吸指導を進めれば良いでしょうか?

A1:「喀痰管理、ピークフロー」

効果的な外来は週1-2回での呼吸評価およびカフアシストまたはEzPAP+ピークフロー(270L/min以上の咳の最大呼気流速)での呼吸理学療法が良いと思います。喀痰促進のため、自宅でのコーチ2(深吸気)+ピークフロー実施の呼吸指導を行います。喀痰不全で聴診上常時複雑音(ロンカイ、コースクラックルなど)が聴収されるようでしたら、自宅でのカフアシストレンタル(診療報酬請求可)も選択肢に入ると思います。また、ご家族にも聴診器を購入していただき、お子さんの肺音の聴診ができるようになると、児のより良い健康管理もできるようになります。肺の中の分泌物貯留を少しでも軽減してあげるとレントゲンやSpO2に変化が出るかもしれません。呼吸指導の一番の目標は家族(本人・両親)での喀痰管理習得と咳力(ピークフロー)UPになりますので、外来時にその都度咳のピークフローを測り、その向上を目指していくと良いと思います。呼吸指導の根拠・流れについては メニューその他:在宅人工呼吸管理児の呼吸理学療法と排痰保持装置(マニュアル) を参考にされてみてください。

 

Q2:「肺炎、呼吸介助」

PICU(小児集中治療室)に2ヶ月の赤ちゃんが肺炎で入院しました。胸郭の形成が未成熟なため、肋骨を下制する呼吸介助法(スクィージング)はリスクがあると考え、上部胸郭の前後方向のみ呼吸介助を行っています。効果的な呼吸介助の方法はあるでしょうか?

A2:「スクィージング、方法」

先天的な疾患・障がいを持っていない赤ちゃんでしたら2ヶ月児のスクィージングは可能です。呼吸介助の力加減と胸郭を押す方向が適切であれば低出生体重500g前後の児もスクィージングは効果があります。実際の様子は「赤ちゃんにやさしい発達ケア(メディカ出版)」を参考にされてみてください。2ヶ月の児ですので、施行者の両手で児の胸郭を覆い、胸郭全体をスクィージングします。肺炎による無気肺形成の場合は、無気肺部に相当する肺野の吸気を促進する呼吸介助を意識します。肺炎による分泌物貯留過多の場合は、呼気を促進する胸郭全体を絞り込む呼吸介助を意識します。

 

Q3:「乳児、体位排痰法」

乳児の体位排痰法は成人と反対の体位をとると聞いたことがあります。乳児の体位は成人と同じでしょうか、反対でしょうか?

A3:「体位、リスク」

乳児も体位排痰法の体位は成人と同じです。新生児を含めた小児全般に同じです。以前小児の排痰の体位は成人と反対という話を聞いたことがあります。その理由として、1つ目は、小児の場合肺内の空気は上側より下側が多い、2つ目は、小児の場合肺内の空気は成人と同様に上側が多いが、痰が溜まっている肺を上側にする体位では、充分な換気ができなくなりリスクがあるでした。ただ、小児は成人と比較し解剖学的・生理学的に未熟であるにしても大きな違いはありません。小児でも体位排痰法の体位は成人と同様ですが、換気量不足のリスクはありますので、呼吸管理に注意を払い体位排痰法を行います。また、体位排痰法を実施する際、呼吸器管理をしている場合は頸部の角度で用意に挿管チューブがつぶれやすいリスクがあります。体位をとった直後に頭の位置をすぐさま確認し、換気が安定しているのであれば頭をタオルなどで固定します。

 

Q4:「脊髄性筋委縮症、EzPAP」

脊髄性筋萎縮症(SMA)で気管切開はしていませんが、ピークフローが100L/分の6歳児がいます。3本タイプの吹き戻し(巻き笛)で呼吸練習しており、3本中2本までしか出せません。呼吸理学療法としてEzPAPを用いることに有効性はありますか?

A4:「呼吸理学療法、肺(胸郭)拡張」

SMAでの呼吸理学療法のエビデンスは確立していませんが、呼吸理学療法の基本的なところからEzPAPの有効性について述べます。①SMAのゆっくりと経過する呼吸機能の低下は仕方ありませんが、最終的な呼吸理学療法の目的は肺炎や無気肺による急性呼吸不全に予防になります。②肺炎や無気肺悪化を防止するためには、排痰能力の向上になります。③排痰能力の指標である咳のピークフローは低値だと思いますが、咳の能力の要素は、肺活量にありますので、基本的にはエビデンスが確立している筋ジストロフィーの呼吸理学療法に準じます。④呼吸理学療法の直接的な目標は、胸郭の可動性の向上および深吸気による肺(胸郭)拡張になります。⑤EzPAPは吸気により深吸気を促し、呼気時の呼吸抵抗により気道・肺拡張を促すことができます。⑥胸郭の可動性の向上および深吸気による肺(胸郭)拡張はカフアシストの使用が一番効果がありますが、6歳児ですと適応できないことも多いので、EzPAPの使用も有効です。

 


□哺乳・摂食・嚥下

Q1:「哺乳、離乳食拒否」

①咽頭軟化症があり気管切開を行った12ヶ月のお子さんを担当しています。人工鼻を使用した状態で哺乳100ml程度飲めていましたが、最近、急に一口も飲まなくなりました。8ヶ月頃より離乳食も開始していましたが、全く受けつけません。発達はお座りが少しできるようになりました。また、臥位やラック座位では、常に四肢をばたばた床に打ちつけるような行動がみられ、覚醒している間中動かしています。児は機嫌が良く笑顔でいることが多く、あまり機嫌を悪くしてぐずる、泣くなどがありません。母親がほほ笑みかけるととても笑顔になりますが、視線があまり合わないのが気になります。全体像から考えられる児の発達や哺乳の進め方はどのようなことでしょうか? ②自閉傾向の児の離乳食の進み具合に特徴があるように思います。「食材がやや固形になる離乳食の後期でも、ペースト状を好み次の段階に進まない」、「前歯で噛み切る行為が2-3歳にならないとできない」、「咀嚼が苦手」、「食事の内容に拡がりがない」、「食事に興味がない」、「いろいろなスプーンを試すが、どれも受けつけず、母の手からしか食べない」などです。また多くの児で運動発達の遅れもみられます。このような児に対し何か良い支援方法はありますでしょうか?現在は、嚥下の評価、口腔内過敏であれば口腔内マッサージを行い、食事・回数の工夫など母親と一緒に考えていますがいかがでしょうか?

A1:「自閉症、変化、長期支援」

①発達の経過や行動を考慮すると、お子さんの全体像は知的障害(軽度-中等度)+自閉症スペクトラム障害(程度は不明)だと思います。急に哺乳を受けつけなくなったこと、離乳食を受けつけないことは摂食・嚥下の機能的な問題ではなく、自閉症スペクトラム障害の影響だと思われます。急に哺乳しなくなった理由としては、哺乳中に誤嚥しそうになった、ミルクの温度が合わないことに気がついたなど、何か嫌なこと(感覚)があったという可能性も考えられます。また離乳食も少しずつ継続しているようでしたら、離乳食でお好みの味を覚えたなどもきっかけになると思います。今後としては、急に哺乳し始める、離乳食を食べ始める、そしてまた急に飲まなくなる、食べなくなるということを繰り返していくと思います。哺乳は少しずつ減らしていきながら児が好む味や食感を探しながら離乳食を進めていくのが良いと思います。ちなみに自閉症スペクトラ障害のお子さんは乳児期では視線が合い微笑返しがみられることはあります。徐々に視線が合わないことが顕著になってきます。②自閉傾向のお子さんの食事の特徴をよくつかまれていると思います。食材の固形化や噛みちぎりを嫌がるのは口腔内の過敏性からきます。咀嚼の苦手さは口腔内過敏性も影響していますし、口腔運動の拙劣さもあります。摂食・嚥下の機能的な問題がない場合は、日常の食事は児が好むやり方を発見・周到し(好きな食材・食器・温度・時間・手づかみでも)、児に負担をかけないように毎日1品いろいろなものを試す感じなります。口腔内過敏性に対するマッサージのほか、全身の感覚過敏性も局所過敏に影響してきますので、特に手のひらなどの過敏性も評価・対応します。自閉傾向の児の摂食・嚥下は常に変化しますので(原因がわからないことが多い)、栄養より量確保優先で長い目で経過を追うつもりでご家族に寄り添ってください。

 

Q2:「哺乳、ピエール・ロバン症候群」

ピエール・ロバン症候群の1ヶ月の赤ちゃんを担当していますが、哺乳が進みません。症状は、小顎症、口蓋裂、舌根沈下による喘鳴があります。咽頭・喉頭軟化症はありません。人工呼吸器の装着はなく、哺乳中のSpO2は保たれており、啼泣時などでも低下することはなく安定しています。ホッツ床を装着し、嚥下自体は上手に出来ますが、哺乳中息継ぎが上手に出来ず、数回嚥下をするとのけ反り乳首を外そうとします。これを何回か続けていると10分程度で、哺乳を嫌がり寝てしまいます。経口哺乳量は10ml程度で、残りは経鼻菅からの注入になります。哺乳支援として、最初に口蓋裂用乳首のP型(ピジョン)の乳首を使用していましたが、舌の動きを促進するために、nuk(nuk)の乳首に変更しました。吸啜は比較的強く出来ていますが、上手く哺乳しているような時でも、哺乳量は思わしくありません。ミルクの口角からのこぼれはなく、嚥下時の咽頭部の残留音はありません。また、喘鳴時の姿勢では、側臥位をとるように指導していますが、他に良い姿勢はありますでしょうか?喘鳴は成長するにつれて改善することが多いでしょうか?この赤ちゃんの哺乳支援に必要な評価や方法、成長を待つことで期待できる変化などありますでしょうか?

A2:「哺乳評価、乳首と姿勢の選択、予後」

①吸啜の評価と支援・・・吸啜反射は出ており圧も強めですが、口蓋裂でホッツ床を装着しても口腔内のどこかに隙間ができている、小顎症・舌根沈下により舌尖が歯茎まで出てこない、の要因によって有効な吸綴圧・舌の蠕動運動が得られていないと思われます。そのため、口角からミルクがこぼれるほど口腔内にミルクが流入しておらず、吸啜頻度に比べ吸綴量は少ないと思います。→→→P型やnukなどを空で吸啜してもらい、乳首の中を覗き込み、乳首と口腔内の密着具合・舌の位置を評価します。口腔内の隙間が少なく、舌尖が歯茎近くまで出てきやすく、吸啜リズムが規則的な乳首を選択します。嚥下が良好なので、一般乳首も含めてスペシャルニーズフィーダー(旧ハーバーマン←P型よりやや小さく吸啜補助ができるので良い)など乳首孔が大きめなものが有効かもしれません。②嚥下の評価と支援・・・哺乳中のSpO2低下や咽頭部の残留音がなく嚥下は良好です。→→→シリンジで1回嚥下量(0.1ml~)を確認し、選択した乳首を指で軽く押した際の1回吸啜量と同じ程度か少ないかを確認します。③呼吸の評価と支援・・・小顎症・舌根沈下による喘鳴があり咽頭狭窄の可能性はありますが、常時ではなく啼泣時のSpO2低下もないため呼吸は比較的安定していると思います。→→→喘鳴時の側臥位は有効です。その際は児はフラットにし、やや腹臥位傾向で頭部を上げないことで舌根の沈下はより軽減されます。④吸啜・嚥下・呼吸の協調性の評価と支援・・・哺乳時に舌根が沈下しやすく、息継ぎがしにくくなっていると考えられます。体調や日によって哺乳が児にとってやや苦痛となっている時もあると思います。→→→仰臥位に近い姿勢での哺乳はより舌根沈下が顕著になります。一番有効かと考えられる哺乳方法は、スペシャルニーズフィーダーを用い、最初の3-5分間は顎を支持した抱っこでの前傾位で舌尖をより前に出し、咽頭が少しでも開いた状態で、吸綴練習を主な目的とした哺乳を行います。児が疲れる前に、児の抱っこ姿勢をお座りのような垂直位にし、スペシャルニーズフィーダーの乳首を介助者が押し吸啜補助をしながら哺乳を継続します。児が成長し、開口がより大きくできるようになれば垂直位姿勢もしくは側臥位姿勢での直母も有効かと思います。※哺乳は児が苦痛な経験をしない範囲で継続していきます。自立哺乳が退院等の目標になっている場合は、シリンジ嚥下やカップフィーディグでの嚥下量増加も1つの考え方になります。喘鳴は成長にともない咽頭腔が太くなるので改善していく可能性は高いです(1歳位から)。ただ、成長するにつれ啼泣力が強くなると啼泣時の舌根沈下が顕著になり、喘鳴やSpO2低下がより認めることもあります。

 

Q3:「仮死、嚥下反射、アイシング」

仮死状態で出生した脳性麻痺リスクの1ヶ月の赤ちゃんを担当しています。嚥下反射をまったく認めず、探索反射や吸綴反射もみられません。哺乳支援として綿棒で口腔内マサージを行っていますが、各反射の反応はありません。児に対して、嚥下反射を促すようなアイシングを試みても良いでしょうか?試みる場合の方法や注意点について教えてください。

追加Q:「胃食道逆流、ポジショニング」

この赤ちゃんは人工呼吸器から離脱できましたが、少し前に肺炎を起こしています。普段は持続吸引が必要で、頻回な胃食道逆流も指摘されており、ミルクが口腔内に貯留していることもあります。頻回な胃食道逆流を認める児の場合、腹臥位管理が良いとの知見を知り、主に腹臥位を保持し、側臥位や時折座位なども取り入れながらポジショニングを行っていますが、このような姿勢管理で良いでしょうか?

A3:「球麻痺、評価・支援の考え方」

哺乳支援をされようとしているなので人工呼吸器管理をされていない赤ちゃんと察します。嚥下反射が出現しておらず、吸綴反射もみられないため、延髄の運動核の障害(球麻痺)だと思われます。アイシングを試みるのは良いです。赤ちゃんでは口唇周囲や喉頭部をアイシングしますが、回数や時間は定まっていません。1回目のアイシングで児のバイタルや反応を慎重に観察し、著しい変化がなければ継続していきます。1セット目(初日の試み)のアイシングで口腔・嚥下反射にわずかな変化がみられる場合は継続する意味がありますが、わずかな反応もみられなければ、継続する効果は乏しいと思われます。いわゆる先天性の球麻痺は大きな変化は望めないことが多いため、その場合は1ヶ月ごとにアイシング評価をしていくことをお勧めします。普段の赤ちゃんに唾液の誤嚥を認めない場合は、唾液の嚥下もしくは声帯の息止めができている可能性があるため、シリンジによる直接嚥下練習も選択肢になると思います。唾液の誤嚥を認める場合(微熱が続く、常に炎症反応値が高い、誤嚥性肺炎像を認めるなど)、もしくは口腔に持続吸引が必要な場合は、アイシングで嚥下になんらかの反応が出てきた場合も、誤嚥しない完全な嚥下反射がみられるようになる可能性は低いかもしれません。その場合は、気管切開後の嚥下練習が児の負担が少なく良いと思います。

追加A:「哺乳中後、右側臥位、腹臥位」

唾液や逆流したミルクの誤嚥性肺炎の疑い(特に右上葉中心の炎症)もありますので、完全な嚥下反射の出現は望めないかもしれませんが、赤ちゃんに負担がかからないことを気をつけながらあきらめずに支援してみてください。唾液の誤嚥を軽減するには①ベッド平らでの腹臥位または側臥位(下側の脇下に5-10cm厚のタオルを置き、若干頭を下げた状態で顔はやや下向き←唾液が喉頭に向かわず、すべてが口腔外に垂れてくる姿勢)ですが、胃食道逆流を軽減するには、②上体拳上位(30°以上)での腹臥位または右側臥位になります。哺乳中後(ミルク注入中と後1時間)は②の姿勢、その後は①の姿勢というパターンになります。肺炎既往を考えると唾液を誤嚥しやすい背臥位をとる理由はないと思いますが、頭部や体幹の変形が目立ってきそうであれば、持続吸引でのベッド平らでの背臥位もとる必要があるかもしれません。あきらかに胃食道逆流があるので本来は検査はしなくて良いと思いますが、どのくらいで消化されているのか(上体拳上をどの程度の時間とるのか)知るには胃食道逆流検査は有効かと思います。

 

Q4:「哺乳支援、開始基準、観察」

言語聴覚士です。哺乳支援に関して手探り状態です。早産児で修正34週が過ぎ、哺乳を開始できそうと判断できたとしても、①どのくらいから、どのくらいのペースで哺乳を進めていって良いのか、②飲み終わって30分後の変化まで見られないけどどこまで見たらいいのか、③哺乳練習中のモニター観察は何を基準にどのように判断するのか、など教えてください。

A4:「哺乳練習、哺乳量・時間」

早産児、低出生体重児で呼吸状態も落ち着いていれば、修正34週頃から哺乳は開始できます。直接授乳が推奨されていますが、赤ちゃんや母親の希望・様子から判断します。児が飲みたいだけ哺乳して大丈夫です。児の病態や治療経歴から判断して病棟基準を作る場合は、最初の1-2日は5分間もしくは10mmまでと区切って良いと思いますが、問題を認めない場合は制限を外します。呼吸疾患・先天異常などがあるようでしたら、哺乳評価を行い、評価上問題がなければ通常哺乳を開始し、問題が見つかれば、哺乳プログラムを作成し、児の負担がかからない範囲で哺乳練習を開始します。②基本看護師さんに状態を見ていただきます。もし30分程度で変化あるならば、嘔吐や誤嚥など胃食道逆流症が主な症状だと思います。③哺乳練習中のモニタリング(含むモニター観察)は心拍、呼吸数、SpO2、顔色、呼吸状態などになります。心拍や呼吸数の急激な上昇または下降、SpO2の下降(90以下)、顔色として蒼白またはチアノーゼ、呼吸状態として咽頭や胸郭の陥没や咽頭部のゼコツキなどを確認します。 モニタリングで変化が見られる前までが児の負担がかからない哺乳練習範囲(哺乳量・時間)です。  

 

Q5:「哺乳、嘔吐」

生後1ヶ月の赤ちゃんで原因不明の哺乳中~後の嘔吐があります。生後数週間での肺炎既往があります。探索・吸綴・嚥下反射は目立った問題なく、哺乳量はやや少なめです。母親の授乳中の抱き方にぎこちなさがあります。下剤の投薬で嘔吐は減ってきています。どのような評価や支援をすれば良いでしょうか?

A5:「胃食道逆流、縦抱き、げっぷ」

嘔吐の一因となりやすい授乳中の赤ちゃんの反り返り(筋緊張亢進)の有無、抱き方(きつく抱いている、姿勢が不安定、頭が低い)、吸綴での空気嚥下の有無、むせの有無、酸素飽和度(SpO2)や心拍の変化を評価します。嚥下に問題がないようでしたら、哺乳中後の胃食道逆流による誤嚥性肺炎だったことも考えられます。授乳中の安定した縦抱き、縦抱きでの頻回なげっぷ、少量ずつの授乳、授乳後の30度以上の上体拳上位保持が主な支援になります。一時的な哺乳瓶でのトロミ付哺乳、空気嚥下量が多い場合は胃チューブ常駐でシリンジでの空気抜きも検討します。      

 

Q6:「18トリソミー、哺乳困難」

修正41週の18トリソミーの男児で、最初は哺乳瓶20mlくらいまで飲んでいました。じきに痙攣が増えフェノバールを使用したり、嘔吐したりするようになり、哺乳は一時中断となりました。その後、哺乳が再開となりましたが、ほとんど飲めない状態となり、言語聴覚士が再度評価しました。数回吸啜はありますが、嚥下しきれず口から漏れ、五分もしないうちに鼻閉音があり、SpO2低下もみられます。咽頭の湿性音も認められ、誤嚥リスクも考えられますが、今のところ肺炎はありません。唾液分泌は多くなく、口腔からの流涎もありません。舌根沈下(口蓋垂が見えない)や鼻咽腔閉鎖不全がありそうです。このお子さんが、なぜ哺乳困難となったのか、機能的なものなのか、器質的なものなのか、評価方法や支援方法について教えてください。

A6:「哺乳負荷、楽しんで哺乳」

観察・評価された内容からすると、①吸啜・・・筋緊張低下、痙攣およびフェノバール服薬での覚醒レベルの低下による吸啜圧の低下、吸綴リズム緩慢、②嚥下・・・鼻咽腔閉鎖不全、舌根沈下による嚥下機能不全、③吸啜と嚥下リズム・・・嚥下量より吸啜量(もしくは乳首から流れてくるミルク量)が多いことによる吸啜と嚥下の協調性が乱れ、にまとめられます。他に必要な観察・評価は、①吸啜・・・口蓋裂および小顎症の有無、心疾患の有無による哺乳負荷への影響(疲労感)、空乳首を吸啜させたときの口腔内の密着具合の観察、②嚥下・・・シリンジからのミルク滴下による嚥下遅延の有無の観察、1回嚥下量の評価、③吸啜と嚥下リズム・・・吸啜回数と嚥下回数の比率の評価になります。以上の観察・評価はすでに行われているかもしれませんが、18トリソミーのお子さんの哺乳は、一般的に嚥下機能不全(口腔、鼻咽腔、咽頭での構造的な影響)を有し、吸綴負荷が高く(すぐ疲れてしまう)、無理をすると吸啜と嚥下の協調性が乱れて誤嚥するという状況が多いです。ですので、スタッフ間で、「基本的に哺乳全量は飲めない」、「児に負荷をかけず楽しんで哺乳をしてもらうことが目標」という認識が必要になります。おそらく、このお子さんの哺乳支援は、1回嚥下量が少なく、嚥下量より吸啜量が多い場合は乳孔が小さい乳首の選択、児への負荷を少なくする(SpO2低下しない範囲、疲労度の経験)ために量より時間(5分程度)での制限になると思います。哺乳中後のSpO2回復が速やか、肺炎履歴がない場合は、綿棒嚥下練習より、直接哺乳練習で良いと思います。あとは哺乳後の上体拳上または腹臥位のポジショニングも検討していきます。

 

Q7:「哺乳時むせ、陥没呼吸」

出産時の問題はなかった満期産児で、哺乳時にチアノーゼがありNICUに入院しました。哺乳時にむせがみられることが多く、哺乳の評価依頼がありました。耳鼻科の診察も入り、結果は特に問題はないとのことでした。哺乳評価の結果としては、①吸啜反射、探索反射問題なし、②吸啜窩はやや浅め、③口腔・咽頭内の唾液の貯留なし、咽頭部の貯留音なし、④1回嚥下はスムーズで、残留音なし、⑤吸啜:嚥下:呼吸比=2:1:3、⑥2回連続嚥下のときにむせやすい、⑦とろみ付きのミルクにすると5回連続嚥下でむせやすい、そのときSpO2は80代後半まで低下、HRは上昇するが、回復しやすい、⑧チアノーゼ症状はないが、むせた後は陥没呼吸がみられ、20ml哺乳すると陥没呼吸は増強しやすい、⑨呼吸は浅く、啼泣時には嗄声や漏斗胸様の陥没がみられ、哺乳最後の方では陥没は増強しやすく、呼吸が追い付かない様子、⑩四肢の筋緊張の異常性、過敏性などなし、⑪自発運動はスムーズな動きがみられる。評価後、夕方の哺乳時にSpO2が回復せず、誤嚥による無気肺が生じ、nasal CPAPが開始されました。嚥下自体は問題はないと判断しましたが、嚥下後の息継ぎの呼吸に問題があると思いました。耳鼻科では、気管支ファイバーでの観察は行われず、視診で確認できる範囲で評価されたようです。陥没呼吸がある場合、哺乳はどのように進めた方が良かったのでしょうか?むせがある場合、とろみ付きミルクは無気肺の原因になるのでしょうか?高口蓋または吸啜窩が浅い場合、哺乳に問題は生じますか?

A7:「気管・気管支軟化症、喉頭軟化症、呼吸疲労」

この赤ちゃんは、気管・気管支軟化症、喉頭軟化症が疑われます。気管・気管支軟化症では呼気時狭窄・啼泣時喘鳴、喉頭軟化症では吸気時喘鳴を認めやすいです。普段の呼吸で喘鳴を認めず、啼泣時に胸部の強い陥没を認める場合は、気管・気管支軟化症の疑いが高いと思われます。陥没呼吸を認める場合も、即哺乳中止にはなりません。またむせがある場合はかえって誤嚥のリスクは少ないので、とろみ付きミルクが無気肺の原因に直接結びつくことは考えにくいです。嚥下自体に問題ないと評価された場合は、咽頭部残留を認めやすい喉頭軟化症の可能性は低く、気管・気管支軟化症を疑う気管支ファイバーの検査は必須かと思われます。哺乳評価としては、1回嚥下量の評価を行い、0.1-0.3mlを1回で嚥下できない場合(通常、満期産児では1回嚥下量0.3ml)、吸啜:嚥下:呼吸比=2:1:3では、2回吸啜で咽頭内に流入してきたミルクを1回嚥下でクリアできず、3回呼吸中に誤嚥するリスクがあります。ただむせ機能があるので、ある程度ミルクを喀出できますが、むせでミルクを喀出できなかった分は気管に流入し、誤嚥する場合があります。哺乳前にその児が吸う乳首の孔の大きさを確認することも大事で、哺乳瓶を逆さにして、孔から絶え間なくミルクが垂れてくる場合は、咽頭内のミルク流入量がかなり多くなり、嚥下処理できないことがあります。喉頭軟化症や気管・気管支軟化症を疑う児の場合は、乳首の孔の細いタイプを選択し、呼吸苦から哺乳時疲労しやすいので、ミルク量でなく、呼吸状態を確認しながら呼吸疲労が起きない時間で哺乳を区切ります。哺乳中に呼吸苦が表われてくると、吸綴:嚥下:呼吸比率も変化してきます。高口蓋、吸啜窩が浅い点では、吸綴時の口腔内陰圧が得られにくいので、ミルクの流入量が少なくなり、哺乳量は増えませんが、かえって誤嚥リスクも減ります。

 

Q8:「早産児、指示哺乳」

当院では修正34週頃から哺乳を始めています。しかし、この時期は覚醒の浅い児もおり、哺乳中に寝てしまう、疲れてしまうなどがみられます。哺乳時間は20分までが望ましいといわれていますが、児の体重を増やさないといけないこともあり、医師からの指示哺乳量がまかなえず、30~40分かけて飲ませるように頑張らせてしまっていることがあります。覚醒の浅い児や、指示哺乳量が20分以上かかってしまう児などの対策があればご教示いただけないでしょうか?

A8:「哺乳時間、経管栄養」

医師の哺乳指示は哺乳時間でなく哺乳量になりますので、30-40分かけて指示量を飲ませることはよくあることだと思います。ただ、児の負担(疲労感)や哺乳を行う看護師の負担感からすれば、あまりよくないと思います。一番良い方法は、哺乳回数を増やす、哺乳時間を決めず啼泣時に飲みたいだけ飲ませるです。しかし、それも病院業務からすると非効率であり、それが実施できる病院は少ないです。児にとって満足感が得られ負担感が少ないのは、20分で哺乳できなかった分は経管栄養でまかなうという方法になります。修正34週-36週から指示哺乳量を全量哺乳することは困難な児は多いです。しかし、1-2週間経つと哺乳量は一気に増えてきますので、あまり無理して経口哺乳させる必要はないです。哺乳は楽しく、落ち着く時間であることが優先になります。

 

Q9:「乳頭混乱、母乳実感」

乳頭混乱や低出生体重児では母乳実感が良いと聞いたことがありますが、その理由はなんでしょうか?

A9:「乳首の特徴、口腔内密着」

乳頭混乱が起きている赤ちゃんは母親のおっぱい、もしくは哺乳瓶の乳首のどちらかを好み、どちらかを極端に嫌がります。ピジョン株式会社の母乳実感は乳首の特徴として裾が富士山型のように広く、おっぱいの形や弾力を似せた作りになっていますので、混乱が起きにくいと言われています。また低出生体重児は、口腔内の脂肪が少ないため、哺乳瓶の乳首が口腔内に密着し、ミルクを圧出しやすくなるための陰圧を生み出すためには、母乳実感のような乳首の裾が広く大きい方が口腔内に密着しやすくなります。

 

Q10:「哺乳拒否、覚醒レベル、哺乳姿勢」

筋緊張低下の赤ちゃんで落ち着かず哺乳に苦労している児がいます。哺乳はしっかりと覚醒した状態で飲むことが良いと思いますが、覚醒レベル(state)が低い状態でないと嫌がって乳首を押し出したりして哺乳が続きません。stateが低い状態でも哺乳をして良いでしょうか?また、筋緊張低下の児は座位のような垂直姿勢で哺乳することが良いと聞いたことがありますが、その理由はなんでしょうか?

A10:「小まめな哺乳、哺乳中state、リラックスした姿勢」

筋緊張低下の赤ちゃんに限らず、落ち着きのない児は覚醒レベル(state)が低いほうが、無意識に反射として哺乳するため、哺乳を嫌がらずに哺乳量が多くなりやすいです。バイタルサインへの影響がなければ、stateの低い状態での哺乳は大丈夫です。哺乳中に目と目を合わせて楽しく飲むときもあれば、安心してウトウトしてくることもあり、哺乳中のstateは一定ではなく様々です。時期が経つと赤ちゃんも少しずつ落ち着いてきますので、しばらくは空腹が進み落ち着かなくなる前に小まめに哺乳する、ウトウトしている間に哺乳をすると良いです。また、哺乳姿勢として座位のような垂直姿勢を保持することで、stateを上げる、またstateが上がることで筋緊張が高まる、という狙いがあります。児が垂直姿勢で哺乳をする場面は、直接授乳の一部の方法でありますが、一般的な哺乳姿勢ではありません。stateを上げて哺乳を行いたい場合の一例ではありますが、その児のstateが上がる刺激・姿勢を探し、stateを上げてから、リラックスした姿勢で哺乳を行うことが望ましいです。

 

Q11:「嚥下反射、喉頭刺激」

嚥下反射の促進の方法として喉頭を外部から刺激するという方法があるようですが、どのように刺激すれば良いか教えてください。

A11:「間接的哺乳練習、唾液嚥下、少量嚥下」

嚥下反射の促進の方法として、喉頭を外部から刺激する方法は間接的哺乳練習になります。嚥下に合わせて喉頭を介助者の指先で押し上げるという方法になりますが、それほど効果が高い方法ではありません。嚥下反射の促進は直接的哺乳練習のほうが効果が高いため、綿棒吸啜にともなう唾液嚥下、シリンジからの少量(0.1ml~)嚥下などをおすすめします。喉頭の刺激は、ある程度哺乳が可能な覚醒レベル(state)の低い赤ちゃんの哺乳時の吸啜・嚥下リズムを促す方法としては有効な実感があります。

 

Q12:「離乳食、咽頭反射」

離乳食で、とろみ様から少し粒が混ざった食事をするようになってきた児がいます。ただ、咽頭反射がよく見られるようになり、嘔吐しそうになります。出生後、心臓手術の経緯があります。挿管による声帯麻痺の影響や極低出生による発達の未熟性などに原因がありますでしょうか?また、どのような評価・検査をすれば良いでしょうか?

A12:「麻痺、口腔発達」

挿管などの反回神経麻痺による声帯の麻痺がある場合は、啼泣時など大きな発声で嗄声になります。嗄声が確認される場合は、耳鼻科に咽頭の内視鏡検査を打診します。啼泣時の声量に問題がない場合は、球麻痺による嚥下障害、口腔発達の未熟性などが考えられます。球麻痺の場合は、喉頭の拳上不全や唾液も含めた咽頭残留音が確認されますので、わかりやすいと思います。この児の場合はそのような様子は見られないようですので、口腔発達の未熟性の影響があるかと考えられます。つまり口腔発達がまだ離乳初期段階で、主に舌が前後のみ動き咀嚼するため、食物を咽頭に運ぶだけの機能しか持たず、少量固形(粒)を処理できず、嚥下時に咽頭反射(むせ)が出現するということがよくあります。先天性心疾患の児は個人差はありますが、精神運動発達の遅れを示す場合が多く、全体の発達の程度に合わせて口腔発達も進みます。月齢が7-8ヶ月でも、発達が5-6ヶ月レベルであれば口腔発達も離乳初期段階という場合がほとんどです。舌が上下に動き、粒を舌と上顎で押しつぶせる口腔発達(離乳中期段階)になりますと、スムースに嚥下できるようになります。離乳初期段階では咀嚼時に舌先が口唇から出たり入ったりします。離乳中期段階では、咀嚼時に舌先が口唇から出ることはなく、上下の口唇は薄くなります。綿棒を口に含んだときに綿棒のつぶれ方など、口唇や舌の動きを観察し、離乳期の発達段階を評価します。

 

Q13:「哺乳中、SpO2低下、吸気狭窄音」

現在36週で、40mlの哺乳をしている赤ちゃんがいます。哺乳開始時は、1回嚥下でも剣状突起部の陥没呼吸がありました。非常に飲む意欲はありますが、哺乳をしていると、SpO2 が97から89~92まで低下し、少し休むと96くらいに戻ります。哺乳中の吸気に高い狭窄音があり、咽頭部の陥没もあります。嚥下音はきれいで、咽頭部に残留音もありません。呼吸がやや苦しそうな原因としては、どう考えれば良いでしょうか?

A13:「吸気性喘鳴、咽頭狭窄」

この児の場合は、吸気性喘鳴を認めますので、気道狭窄(咽頭狭窄・喉頭狭窄・気管狭窄など)が考えられます。ある程度の哺乳ができ、陥没の程度の改善傾向を認めていますので、気道狭窄のうち咽頭狭窄と考えられます。その影響で、哺乳時の息継ぎでは充分な吸気量が得られず、連続哺乳で酸素量不足となり、SpO2が低下してきますが、哺乳を一旦止め、休憩すると吸気量が回復してきます。咽頭狭窄は個人差もありますが、改善傾向を認めるため、現在行っているように休みながら哺乳を継続し、経過をみます。

 

Q14:「乳児、水分、ムセ」

7-10ヵ月の乳児で、哺乳ではムセはみられないのですが、哺乳以外でのお茶や牛乳の水分摂取時にムセがみられます。出生時、心臓の手術で挿管していた児、特に既往歴はない低出生体重児、満期産で特に発達は遅れていませんがややこだわりがある児、各児でそのようなムセがみられます。どの児も耳鼻科では特に所見はなかったです。これはどのような状況で、どのような原因が考えられますか?

A14:「離乳期、口腔発達、未熟」

離乳期の水分のムセは、どの児もそれなりにあります。固形物でのムセの場合は、離乳食の形態と口腔発達が合わず、咀嚼が不充分でムセやすいことがあります。水分の場合は、水分を取り込む量が多い場合に、1回嚥下量の許容範囲を超えるとムセます。また新生児の入院時期に長期挿管していた場合は、喉頭浮腫や軟化症が残存し、喉頭の動きの不全でムセやすくなりますが、今回のご相談のお子さんたちは、そのような症状がありませんので、もし、ムセが通常より多いと感じるのでしたら、口腔発達の未熟が考えられます。口唇での水分の取り込みが発達していないと、一気に水分を摂取しムセやすくなります。コップの縁の口唇の閉じ方が上手でない場合は、スプーンで口唇の閉じ方を練習していきます。先天性心疾患や発達障がい疑いのお子さんは乳児期後半から発達の遅れを認めるようになり、発達の遅れは口腔発達の遅れと関係していますので、口腔発達の評価を行います。

 

Q15:「早産児、哺乳、無呼吸」

修正35週の早産児の哺乳で、哺乳時に呼吸を入れるタイミングが合わず、摂取したミルクを必死に息を止めて嚥下し、ミルクが流入しないように哺乳瓶を傾けないと呼吸が入らず、呼吸をしても頻呼吸になる状況でした。当初から5~10mm程度の哺乳にとどめていましたが、徐々に無呼吸が続くようになり、哺乳を一旦止めることになりました。特に基礎疾患はありません。哺乳と呼吸、頻呼吸と無呼吸を起こす関係性について教えてください。

A15:「呼吸補助、吸綴:嚥下:呼吸の協調性、不全」

早産児は頻呼吸が継続すると呼吸筋が疲労し、呼吸が疲れたからと容易に無呼吸を発生します。体内の酸素量が不足する場合は呼吸数を上げる(頻呼吸)ことで酸素量を増やそうとします。その分疲労しやすくなり、哺乳意欲の低下も認め、そのような児は体重増加も芳しくありません。哺乳時に限らず頻呼吸や無呼吸を認める場合は、軽度の呼吸障害の存在が疑われますので、医師に相談し、呼吸補助(酸素投与やnasal-DPAPなど)の導入での哺乳が必要です。哺乳時のみの頻呼吸の場合は、嚥下時の一時呼吸停止の延長による酸素量低下が要因ですので、吸綴・嚥下・呼吸の協調性不全として、極少量嚥下を継続しながら哺乳発達の成熟を待ちます。

 

Q16:「幼児、吸綴、ムセ」

2歳になる幼児の摂食で、主な舌の動きは前後で、咀嚼時は舌を口蓋に押し当てる音が鳴り、哺乳時の吸綴の舌の動きに似ている所見がみられます。柔らかい固形が少しでも入るとムセてしまいます。このような時期・所見での対応はどのようなことがありまか? 

A16:「口腔発達、過敏、未熟」

基本的な口腔発達として、指しゃぶり、手しゃぶり、遊具食べ遊びなどの発達経過がみられない場合は、口唇や舌などを使った咀嚼の発達が成熟しません。また、口腔内・周囲の過敏を認める場合も咀嚼の発達が進まず、ムセも起こりやすくなります。過敏性を認める場合は、口腔周囲から脱感作を行います。吸綴様の舌の動きから発達を促すために、箸で半固形物を左右の歯列の上に食べ物をのせ、舌の左右の動きを引き出す、やや強引な方法になりますが、飲み込みにくい大きめのより固く噛まないと飲み込めないような食物を与えるなどの対応があります。

 

Q17:「幼児、摂食拒否」

2歳前の幼児で、食物を口に入れることを嫌がり、摂食が進みません。嚥下は問題ありません。スプーンを持ち、食べる真似はできるのですが、食物を口に入れることは絶対にしません。無理に食物を入れようとしても、怒って、暴れて手を振りほどき逃げてしまいます。様々な食材、スプーンの形状など工夫をしてきましたが、やり切った感があります。他にできること、また、このような児は今後経口摂取可能になるのか教えてください。     

A17:「環境設定、時間経過」

ダウン症のお子さんや発達障がいのお子さんで摂食拒否を示すことが多いです。このような児は、時間が経つと急に食べ始める時があります。食卓は毎日いっしょにして、あるとき特定の食物をじっと見て興味を持ち、少し与えてみると食べ始める、子どもたちが集団で食事をしているような場面で、真似をしようとして食べ始める、というようなきっかけがきます。摂食拒否の児の場合は、家族が納得するような可能な対応はしつつも、環境設定+時間経過を見据えて、あせらず、いつか食べ始めることを家族に理解してもらい、児にも食事を強制せず、楽しい雰囲気を大切にします。

 


□療育

Q1:「セラピストと家族、役割」

障がい、障がいリスクを持つ子どもとの関わりで、理学療法士等のセラピストと家族の役割について教えてください。

A1:「体の動かし方、社会性」

あまり例えが良くはないですが、野球で例えるなら、各選手にボールの投げ方やすぶりのようなバットの振り方(体の動かし方)を教えるのは理学療法士等セラピストの役割、野球のルールや監督や選手間の関係のとり方を教える(つまり社会性)を教えるのは家族(および社会)の役割になります。各選手がコーチングされてきた練習を家庭で自主トレするのを支援するのは家族の役割になります。ただ、家族がセラピストになる必要性はなく、食事を与える、排泄を手伝う、お風呂に入れる、いっしょに遊ぶなどの一般的な子育てをすることが、当たり前ですが家族の役割になります。子育ての中で育児に対する困り感が出てきた場合は、セラピストが支援します。また、セラピストは体を動かす方法を教えるだけでなく、社会性を身につけるための土台となる精神・言語な能力の方法を教える役割もあります。

 

Q2:「療育、視点」

障がい、障がいリスクを持つ子どもの療育で大切な視点について教えてください。

A2:「成人期、社会性」

障がい、障がいリスクを持つ子どもの療育で、最終的(成人期に至る)に大事な発達は社会性(社会との関わり方)になります。運動発達では、屋内での床上移動が自助具・補装具を使わずでき、周囲(ヘルパーなど社会資源を含む)の理解があれば、自立した生活ができます。精神発達(知的発達)では、程度において、日中活動の場が変わります。子どもは子どもからの刺激に対して一番反応が良いです。また子どもの世界、大人の世界に早くから入ることで、周囲の理解も得られやすく、社会性も築かれます。ただ、集団活動が増すことによる課題も出現してきますので、いわゆるその困り感は理学療法士等(保健師、保育士、教員、行政など含む)が課題解決に向けて支援します。子ども達が大きくなるにつれて、家庭内でできる関わりに限界がきます。療育の主な場所は保育園や学校に移ります。保育園や学校での集団生活に馴染めない場合は、通園(児童発達支援センター)などを併用利用し、小集団での療育を行い、必要な環境設定、発達支援を明らかにし、保育園や学校にフィードバックできる仕組みを作っていきます。それを一助できる可能性があるのが、その子の成育歴を記録でき、支援者に伝えられる文科省が推奨し、各市町村での作成指示が出ている相談・支援手帳と言われるもので、回答者らが作成したものは“個別支援手帳” (http://heartful.mirainokaze.com/) になります。